鳩山由紀夫首相が中国の胡錦濤国家主席と会談し首脳外交のスタートを切った。「東アジア共同体」を掲げ資源の共同開発を呼び掛けた。中国を動かすには日米関係と対中協力の強化がカギになる。
気負いは感じられるが、鳩山首相らしい外交デビューだった。
首相は会談で、中国と互いの立場の違いを乗り越えられる「友愛」の関係を目指すと述べた。
「東アジア共同体」を目指し、欧州連合(EU)が石炭鉄鋼共同体から出発したことにならい、東シナ海ガス田の共同開発を呼び掛けた。
東アジア共同体は二〇〇五年末から始まった東アジア首脳会議でも目標に掲げられた。しかし、これまでは共同体を構成する国々の枠組みや主導権をめぐり日中の摩擦が続き議論も下火になった。
東アジアの繁栄が続くためには、資源や環境はもちろん、金融問題や安全保障でも地域協力を深めることが欠かせない。日中首脳会談を機に共同体をめぐる論議が再び高まることを期待したい。
大切なのは米国の疑いを招かないことだ。米国は東アジアの共同体構想は自らを排除するのが狙いとして反発を隠さなかった。
首脳外交を通じ中国以上に米国の信頼を勝ち取ることが首相には差し迫った課題だ。日米関係強化は中国を動かすカギでもある。
中国は今年中にも経済規模で日本を追い越し国防予算も二十一年連続で二けた成長させている。
国力充実に伴い、強力な対外姿勢を求める声が党、政府、軍のみならず大衆にも広がってきた。
昨年六月、日中両国は東シナ海ガス田の共同開発で合意したものの実務協議は一向に進まない。
国内の激しい反発が原因で、胡主席は会談で「敏感な問題」と語り苦渋をのぞかせた。
海洋権益への強硬論が強まる中国が空母建造を通じた海洋覇権の道ではなく周辺国との協力の道を進むためにも、日米同盟によるパワーバランスは欠かせない。
一方で中国に対し日中協力の果実を実感してもらうことも必要だ。円借款は〇七年度、新規供与が終了した。使途や成果に問題はあったが、日本が中国を動かすテコを失ったのは事実だ。
もはや中国に援助は必要ないが、対等ベースでアジア地域の資源や環境問題解決に貢献する枠組みをつくることも考えられる。
日中韓首脳会談が開かれる十月上旬の首相訪中では理念や理想から具体論に踏み込んでほしい。
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