HTTP/1.1 200 OK Date: Thu, 24 Sep 2009 02:18:19 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:秋晴れのある朝、国指定の名勝・吾妻峡(群馬県)の遊歩道を歩…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2009年9月24日

 秋晴れのある朝、国指定の名勝・吾妻峡(群馬県)の遊歩道を歩いた。巨岩や絶壁が続き、はるか眼下に吾妻川が青々とした水をたたえる▼この地を愛した若山牧水が<うづまける白渦見ゆれ落ち合へる 落葉の山の荒岩の蔭に>と歌った美しい渓谷の一部は、川原湯温泉とともにダムの底に沈むはずだった▼「水没する前に一度訪れたい」とガイドブックに紹介されている川原湯温泉は一一九三(建久四)年に、源頼朝が狩りの途中で山腹から上がる湯煙を発見したと伝承される。由緒ある温泉地にとっても、この半世紀は八ッ場(やんば)ダムという「国策」に翻弄(ほんろう)された歴史だった▼長い反対闘争に疲れた水没地域の住民は、流域に住む人たちの安全を守るために犠牲になると自らに言い聞かせ、先祖伝来の土地を捨てる決心をした。この苦渋の決断は意味を失うのだろうか▼就任早々、建設中止の方針を明らかにした前原誠司国交相はきのう、現場を視察した。「中止ありき」の姿勢に反発した住民は意見交換会への出席を拒んだ▼関係自治体への負担金返還など、工事中止は続行より巨額の税金投入を伴うが、「動きだしたら止まらない」大型公共事業の象徴である八ッ場ダムの建設中止は、新政権にとって譲れない一線だ。マニフェストには映らない生身の人間が姿を見せた時、どう振る舞うのか。政権の本質が問われる。

 

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