HTTP/1.0 200 OK Age: 233 Accept-Ranges: bytes Date: Thu, 24 Sep 2009 03:17:14 GMT Content-Length: 8429 Content-Type: text/html Connection: keep-alive Proxy-Connection: keep-alive Server: Zeus/4.2 Last-Modified: Wed, 23 Sep 2009 14:49:35 GMT NIKKEI NET(日経ネット):社説・春秋−日本経済新聞の社説、1面コラムの春秋

音声ブラウザ専用。こちらより記事見出しへ移動可能です。クリック。

音声ブラウザ専用。こちらより検索フォームへ移動可能です。クリック。

NIKKEI NET

社説2 「共同体」は日中の信頼が先決(9/24)

 ニューヨークで首脳外交を開始した鳩山由紀夫首相の会談の一番手は中国の胡錦濤国家主席だった。首相は持論の「東アジア共同体」構想を提案したが、具体化を目指すにはまず日中間の信頼が欠かせない。

 首相の共同体構想は「友愛」思想に基づく。欧州連合(EU)の先駆けとなった「汎欧州主義」を提唱したオーストリアの政治家、リヒャルト・クーデンホーフ・カレルギーが説いた「友愛」が根拠になっていることは首相本人も認めている。

 欧州統合は戦後の仏独和解から始まった。戦争の一因となったライン川流域の石炭・鉄鋼を6カ国で共同市場化する欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)創設が統合を進めた経緯などを踏まえ、首相は東アジア共同体のイメージを描いているようだ。

 首相は胡主席との会談で「日中の違いを乗り越えて信頼関係を築き、それを軸に東アジア全体の共同体を構築したい」と提起した。だが、明確な返答はなかったという。

 仏独の石炭・鉄鋼問題に当たるのは日中両国政府が昨年6月に合意した東シナ海のガス田共同開発というのが首相の思いだろう。首相は「いさかいの海ではなく友愛の海にしたい」とも伝えた。懸案の協定締結について胡主席は事務レベルで協議していく方針を表明しただけだった。

 協定締結交渉が主に中国側の事情で停滞しているのは遺憾だ。最近も東シナ海で日本企業も出資することで合意している「白樺」(中国名・春暁)で中国側が構造物の増築とみられる動きをするなど、信頼を裏切るような行動が続いている。首相が「中国の真意が見えない」と会談で胡主席にただしたのは当然だ。

 東アジア共同体構想は2005年12月の第1回東アジア首脳会議(サミット)の共同宣言にも盛り込まれていた。経済面での一体化進展を映したものだが、民主主義、自由、人権、市場を重んじる価値観では各国・地域になお隔たりがある。今の段階では政治や安全保障を含むEU型共同体の論議は現実的でない。

 首相はどのような共同体を目指そうとしているのか。日米同盟との関係をどう考えているのか。中国との信頼醸成と同時に、「友愛」だけではない外交戦略を示す必要がある。

社説・春秋記事一覧