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気候変動サミット―打開へ次の首脳会合急げ

 「未来の子供たちのために世界の政治指導者が大きな決断をした、と言われるように努力しよう」

 鳩山由紀夫首相の呼びかけに、90カ国以上の首脳が拍手でこたえた。国連気候変動サミットの開会式である。

 「大きな決断」とは、京都議定書に続く地球温暖化防止の新たな国際的枠組みのことだ。12月の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)で合意を目指している。

 だが、いまも先進国と新興国・途上国の主張の隔たりは大きい。何とか打開の糸口をつかもう、というのが今回のサミットの目的だ。

 交渉進展のカギを握る中国から、注目すべき発言があった。胡錦濤国家主席が「温室効果ガス排出を2020年までに05年比で大胆に削減するよう努力をする」と開会式で述べたのだ。

 さらに、その具体的な方策の一つとして、全エネルギーに占める非化石燃料の割合、つまり原子力や自然エネルギーなどの割合を15%まで高めるという目標も掲げた。

 これまで中国は「先進国の努力が先決」という基本姿勢を崩さず、自国の取り組みについては多くを語ってこなかった。そんな姿勢に変化の兆しが見えてきた。中国が大量排出国であることを自覚し、一歩を踏み出したとすれば歓迎する。今後、さらに態度を鮮明にし、インドなど他の新興国を合意に向けて引っ張ってもらいたい。

 もう一つのカギを握る米国のオバマ大統領は「この惑星の未来は世界的な排出削減の努力にかかっている」と意欲を見せた。ただ、交渉に弾みをつけるような大胆な新提案はなかった。

 その背景には、大統領が成立を目指す地球温暖化対策法案の審議の難航がある。6月に下院を通過したものの、COP15の前に上院で可決するのは難しい情勢という。公約である医療保険制度改革の実現に、目下の精力を集中せざるを得ないようだ。

 温暖化対策について米議会には、景気への悪影響や、企業の国際競争力がそがれることへの懸念がある。このままでは、温暖化防止に積極的なオバマ大統領の国際合意づくりに向けての主導力がそがれてしまう。新興国の歩み寄りを促すのも難しくなろう。米上院の早急な決断を望む。

 日本の役割も大きい。鳩山首相は今回、「20年までに90年比25%削減」という積極的な国際公約を表明した。先進国が官民の資金を投入して途上国の排出削減などを支援しようという「鳩山イニシアチブ」も提案した。

 残り時間がわずかないま、首脳級の交渉で局面を打開すべき時だ。G20金融サミットが今日からあるほか、主要排出国のサミットを開こうとの声もある。鳩山首相は、あらゆる機会を通じて各国首脳に働きかけてもらいたい。

長妻厚労省―「国民のため」のモデルに

 「脱官僚依存」を掲げる新政権の閣僚と、身構える官僚。その緊張関係を象徴するのが、長妻昭氏を大臣に迎えた厚生労働省だ。

 新大臣の初登庁といえば、職員らが拍手で出迎えるのが慣例。だが組閣翌日の17日、長妻氏を迎えた厚労省に拍手はなかった。

 長妻氏は年金記録のずさん管理を暴き、社会保険庁や厚労省に対する批判の急先鋒(きゅうせんぽう)だった。首相官邸での就任会見でも「ウミを出す」と宣言。省内のピリピリした空気が、儀礼的な拍手すら押しとどめたように見えた。

 その半面、大臣着任のあいさつを聞こうとする職員で省内の講堂はあふれた。長妻氏がしようとしていることへの関心は高い。

 こうした状況を考えれば、長妻氏の率いる厚労省こそ、新政権が掲げる「政治主導」のよきモデルとならなければならないことは明らかだ。

 「大臣は役所の長であると同時に、国民から送り込まれた行政のチェック役」。13年前に旧厚生省の大臣になった時の菅直人氏の言葉だ。長妻氏も同じ思いに違いない。

 菅氏は薬害エイズ問題で役所の抵抗を押し切って情報開示を進める一方、介護保険の導入に道筋をつけた。長妻氏は菅氏の経験にも学んで官僚を賢く使いこなすことが期待される。厚労省の改革や国民に対するサービス向上という成果に向け、政治主導をしっかりと根づかせてもらいたい。

 長妻氏はさっそく、後期高齢者医療制度の廃止、生活保護を受けているひとり親世帯への母子加算の復活、障害者自立支援法の廃止などを打ち出した。いずれも、民主党が総選挙で政権公約に掲げていたものだ。

 これら新大臣の政策を具体化するための選択肢を考えるのが官僚の仕事であることは言うまでもない。政策や大臣の判断の前提となるデータ、試算といった情報を大臣と国民に包み隠さず開示することが不可欠である。

 一方で長妻氏も、専門家としての官僚や国民の声を反映する仕組みを工夫することが求められる。

 目的は、鳩山首相が就任直後の記者会見で語ったように「とことん国民のための政治」を実現することだ。

 雇用や医療、年金、介護など多くの分野で国民の期待を集めているのが厚生労働行政であり、長妻氏だ。民主党が約束した「生活第一」の模範となる政治のありようを示すべき中心舞台こそ、厚労省にほかならない。

 政権公約に基づく新政策づくりは決して易しくない。税や保険料の負担増が避けられないように見えるものも少なくないからだ。

 利害を調整して国民的な合意をどうつくるか。大臣と官僚が本気で力を合わせねば、いい答えは出ない。

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