今年の都道府県地価(基準地価)調査によると全国の住宅地や商業地価格は総崩れとなった。地価下落は景気にはマイナスだが、住環境の改善や福祉施設・商店街などの整備を進める好機となる。
景気に明るさが出てきたとはいえ地価は依然として落ち込んだままだ。この一年間で全国の住宅地は4・0%減、商業地も5・9%減と下げ幅を拡大した。上昇が続いていた東京、大阪、名古屋三大都市圏の商業地は四年ぶりの下落となった。
地価下落の原因は、やはり米国発の金融危機と世界同時不況である。景気を支えてきた輸出型製造業の業績が急速に悪化して、土地取引やオフィス需要が急減した。賃金の低迷と雇用不安から個人の住宅取得は落ち込み、海外投資ファンドも資金を引き揚げた。
こうした傾向は今年一月時点で調査した国土交通省の公示地価や、七月発表の国税庁の路線価などでも明らかになっていた。
地価の先行きも不透明だ。不動産業界では「回復するのは早くても来年春以降」との声が多い。年内に回復との見方もあるが、鳩山新政権の経済・財政運営がもたつけば景気は再び下降し地価も低迷すると指摘する専門家もいる。
一般的に地価下落は景気の足を引っ張る。保有資産の担保価値が減るため金融機関からの借り入れが抑制され、企業の設備投資や住宅建設にブレーキをかける。
かつてのバブル経済崩壊では土地だけで年間二百兆円を超える値下がり損が発生した。巨額の不良債権が重圧となり日本経済は深刻な資産デフレに陥った。今回はまだ大きな影響は出ていないが、長びけば逆資産効果がでてきて個人消費などは低迷するだろう。
もっとも地価下落にメリットがないわけではない。建設資材の値下がりもあるから住宅やビルを建てやすくなる。地方自治体は公園や市街地の整備などで用地を先行取得できるチャンスだ。
今回の調査で地価上昇率一位となった静岡市の東静岡駅周辺の商業地は、駅前の土地区画整理事業が進んだことが理由だ。
また静岡県東部に位置する長泉町は、県立がんセンターを中核とした医薬・健康関連産業の誘致を進めてきた。その結果、人口が増加し住宅地価格は前年比横ばいとなった。
三重県伊勢市の伊勢神宮内宮周辺の商業地は下落しなかった。参拝者増加など観光振興が地価の維持に有効なことを裏付けている。
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