地すべり的な衆院選での民主党圧勝は海外にもインパクトを与えたようだ。きのう未明からの海外電が伝えている。
米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)の論調は高揚感がある。「日本に新時代到来」の見出しで「日本の現代史の分水嶺(れい)として後世に伝わるだろう」と指摘した。
近代の分水嶺となったのは、言うまでもなく明治維新だ。幕府の全権役を務めた勝海舟は江戸城を無血開城に導き、動乱期の政局を乗り切ったが、晩年、日清戦争に反対の論を張ったことはあまり知られていない。
「おれは大反対だつたよ。なぜかつて、兄弟喧嘩だもの犬も喰はないヂやないか」(「氷川清話」)と勝は語り出す。戦争を始めれば、政府はいやが応でも外債に頼らざるを得なくなる。それは国民を塗炭の苦しみに追いやる。
作家の半藤一利さんは、常に財政を基礎に置く冷徹な信念をそこにみる。さらにいつの時代、どんな局面であろうと、責任あるものは「私」を捨てて「公」のために事を成せということに尽きる(「それからの海舟」)と。
民主党の鳩山由紀夫代表は会見で総理になる「覚悟」を聞かれ「政治家を辞める覚悟だ」と答えた。政治生命をかけるという意味だろう。「大切なのは国民の視点に立つことだ」とも。国民が、そして世界が注視している。