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天声人語

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2009年9月22日(火)付

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 しばしば木々を取り上げる小欄だが、思えば「生えているものを書く」ばかりだった。連休の一日、埋め合わせにと植樹のボランティアに参加した。場所は山ではなく、海である▼東京湾に浮かぶ「中央防波堤内側埋立地」。1973年から14年間、東京23区が出した1230万トンのゴミと残土で造られた島だ。都民の手を借りてこの地を緑化する「海の森」計画が、07年に動き出した▼お台場方面から海底トンネルを抜け、ススキの穂が揺れる島に出た。頭上高く羽田からの旅客機が右に旋回していく。指示に従い、エノキとシロダモの苗木を植えた。五輪が東京に来れば、ここで馬術競技の一部があるそうだ。ただ、森らしくなるのは30年後というから、見届ける自信はない▼都市を生命体に見立てると、こうした人工島はトイレにあたる。大量生産と大量消費の残りかすが、海上30メートルに積もる。「海の森」の先に延びる現在の処分場は、埋め立てができる最後の海面だという▼昨年度、23区からは約300万トンのゴミが出され、50万トン近くが埋められた。焼却炉の性能が上がり、かさばる廃プラスチックは燃やされ始めたが、それでも、東京湾に甘えられるのはせいぜい半世紀。その先の展望はない▼植樹の行き帰り、東京港に架かるレインボーブリッジを歩いて渡った。湾岸のスカイラインはここ10年ほどでまた変わり、超高層マンションの群れが秋空を突いている。同じ姿をとどめない東京は、やはり生き物である。その細胞の一つとして、せめて排出は控えめにと思った。

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