鳩山由紀夫首相の外交デビューの週だ。国連総会など国際会議があるため、最初の訪問国は米国になったが、しばしば「愛」を口にする鳩山氏に似合った「愛の国」がある。英国の西にある島国アイルランド。「愛蘭土」と表記される。
▼略して「愛国」とすると、硬いイメージだが、日本とこの国との関係は「日愛関係」。この漢字の連なりは、ほほ笑ましいような、それでいて官能的にも見える。「アイルランドを知れば日本がわかる」(林景一)によれば、日愛両国には共通点が多い。例えば、ともに島国で資源がない。唯一の資源は「人」だ。
▼だから人を輸出した。海外日系人は約250万人だが、海外のアイルランド系人口は、米国だけで4000万人。オバマ米大統領もアイルランドの血をひく。ボクシング元ヘビー級王者、モハメド・アリさんは曽祖父の出身地だったアイルランドのエニスで名誉市民の称号を受けた、と今月初めニュースになった。
▼林氏は、詩人丸山薫の作品の一節「日の照りながら雨の降る/あいるらんどのやうな田舎に行こう」を引く。日が照りながら雨が降る。島国の自然のいたずらか。日本の自然もそうだ。「降りみ降らずみ星の合ふ夜なりけり」(黛まどか)。降ったり降らなかったり……。雨は鬱陶(うっとう)しい。でも秋のそれは詩になる。