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社説2 言わずもがなの「為替不介入」(9/20)

 藤井裕久財務相が外国為替市場への介入に対し慎重な考えを繰り返している。市場の実勢を尊重しようという考えは理解できるが、介入についての方針を事前に示すのは市場に手の内をさらすようなもので、不測の波紋を起こしかねない。

 輸出を原動力とする日本は、円高が進むと企業の輸出採算が悪化し景気が悪くなるため、円高にはどうしても過敏だ。そこで円高局面では財務省が円を売って、主にドルを買う市場介入を実施してきた。直近では2003年から04年にかけて総額35兆円余りの巨額介入を実施した。

 その後、日本は5年以上、介入を実施していないものの、円相場の動向に一喜一憂する体質は変わっていない。円安頼みの政策運営は、企業の外需依存を高め、ますます円安を頼りにするという循環をもたらしかねない。そう問題提起したなら、藤井財務相は間違っていない。

 「株が下がったからといって当局が介入するのは良くない」。そんな発言と照らし合わせると、財務相は市場の実勢を尊重する姿勢のようだ。閣内で政府による民間経済活動への介入をよしとする声が聞かれるなか、藤井氏の姿勢は貴重といえる。

 ただ、時と場合ということはある。今の日本は物価下落圧力に直面している。そんななかで円高が大きく加速すれば、海外からの輸入品の値段が下がり、一段の物価押し下げを招く。円が再び1ドル=80円台に上昇するようだと、輸出採算の悪化から業績回復の腰を折る危険もある。

 円はユーロに対し弱含みで、全面高になっているわけではない。それでも、肝心のドルはこのところ主要通貨に対して軟調となっている。そんな局面で不介入発言を繰り返すことは、市場に円高容認のシグナルと受け取られ、想定外の円相場の上昇を招く可能性もある。それは藤井財務相の本意ではあるまい。

 1993年から94年にかけ藤井氏は非自民の細川、羽田両政権で蔵相を務めた。任期中の市場営業日の約20%に当たる46日も、円高阻止の介入を実施している。介入実施日の比率が最も高い蔵相のひとりだ。今またそうした事態を招き寄せないよう、ここはひとつ言わずもがなの不介入発言は慎んでいただきたい。

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