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同じ漢字を使うだけに、中国語にはときおり、分かったようで分からない言葉がある。そうした一つに「空巣老人」なるものがあると、『漢語的不思議世界』(岩波書店)という近刊に教わった▼空き巣ねらいの怪老人、ではない。独り暮らしのお年寄りのことだという。雛(ひな)が育って飛び立てば、巣は空っぽになる。一人っ子政策の影響などで高齢者だけ残される世帯が増え、かの大家族の国でも社会問題になっているのだという▼お年寄りをさいなむ孤独感は、国を問わず影が濃いようだ。先ごろは警視庁の調査で深刻な実態がわかった。万引きをした高齢者に聞いたら、動機に「孤独」や「生きがいがない」をあげる人が目立っていた。約9割が、友人は「いない」「少ない」と答えたそうだ▼人生への絶望感は脳卒中などの危険を高めることが、最近の米ミネソタ大の研究でわかった。秋田大の調査でも「生きがい」のある人は脳卒中のリスクが低かった。前向きな気持ちを失うと、もろもろに害ばかりが増えるらしい▼私見だが、女性の方が、男性よりも前向きだという印象が強い。ある福祉団体が募った「60歳からの川柳」に〈大概(たいがい)は妻に掛かってくる電話〉とあった。言い当てられた思いの夫君も、おられるのではないか▼老いてからの「友情の芽」は若い頃ほど丈夫ではないそうだ。育つのは遅く、萎(しお)れやすいという。だが、ゆえに味わい深くもあろうと若輩ながら想像する。仲間内の旅行に趣味に、家族再会のひとときに、どうぞ心の満ちる敬老連休を過ごされたい。