中国地方の人や、その出身者は一瞬、それを「広島テレビ」のことと思ったかもしれない▼先日、新型ロケットH2Bによる打ち上げが見事成功した無人補給機「HTV」。わが国初、世界も注目の機にしては素っ気ない名である。既に軌道上にあり、きょう早朝から、いよいよISS(国際宇宙ステーション)へのドッキングが行われる▼すぐそばまで行き、最後は、ISS側からロボットアームで拾い上げてもらう日本独自の方式。自力のドッキングより結合部を広くできて、大きい物を運べるのが利点だ。しかも安全性が高いという▼なみなみと注(つ)がれた時には、こぼさないよう、盃(さかずき)を近づけるのではなく、口の方を持っていく飲み方があるが、あれと同じようなものだろうか。何にせよ、大事に、慎重に、という技術者たちの思いも感じる▼ただ、このHTV、実は使い捨てだ。1号機も、食料や実験装置などを運び込んだ後は、ISSでたまった排せつ物やごみを詰め込み、そのまま大気圏に突入させて焼却処分と相なる。“燃えるごみ”として生涯を閉じるのだ。それがゆえに、ただHTVか。確かに、愛称などつければ情が移る▼貴重な映像などを送ってくれた衛星「かぐや」も地球に戻ることなく、この六月、月面に落下させられた。だが、あれは「かぐや」だからよかったのだ。月に帰ったと、思いきれる。