国土交通省が発表した基準地価(7月1日時点)によると、全国の住宅地、商業地ともに下落幅が拡大した。世界的な金融危機に端を発した投資マネーの縮小に実体経済の不振が加わり、日本の地価は「全面安」の状況が続いている。
三大都市圏は住宅地、商業地ともに4年ぶりに下落に転じ、都道府県別の平均値をみてもすべての地域で下がった。大都市部では下落幅縮小の兆しも見えるが、全般に地価の底入れには時間がかかりそうだ。
地価下落の要因の第一は、不動産投資信託(REIT)やファンドを通じた市場への資金流入の減少だ。金融危機と欧米の不動産バブル崩壊で海外の投資家が日本から資金を引き揚げ、国内の金融機関も不動産向け融資を抑えている。海外マネーの縮小で銀座や丸の内のような一等地でも地価は大幅に下落している。
景気低迷を映して実需も弱い。東京の都心5区でもビル空室率は7%台に上昇し、賃料が下がっている。今回下落幅が全国で最も大きかった地点がある福岡市では、新築ビルの空室率が70%台に達するという。
在庫の減少で最悪期は脱したといわれるマンション市場でも、販売単価の下落傾向は続いている。雇用・所得環境の悪化で住宅購入意欲も盛り上がりに欠ける。
土地の収益力が低下しているのだから地価が下がるのは当然だが、土地デフレが続くと企業の資金調達や金融機関の経営にも悪影響を及ぼす。逆資産効果によって景気回復の足を引っ張る恐れもある。
麻生前政権は過去最大規模の住宅ローン減税を打ち出すなど対策を講じてきた。市場は鳩山新政権が政策を継続するのか不安視している。
新政権は租税特別措置の整理・縮小で「子ども手当」などの財源を捻出(ねんしゅつ)する方針だ。前政権が住宅ローンの税額控除を最大600万円に引き上げた時には、民主党は「高額所得者にしか恩恵が及ばない」と控除枠の維持を主張していた。
新政権は住宅ローンの扱いについて明示していないが、現在の市況をみる限り、減税幅を縮小する環境にはない。租税特別措置の整理は必要だとしても、現行の住宅ローン減税は基本的に継続が望ましい。