多分、十七世紀、英蘭戦争のころの“伝説”だが、あるオランダの海軍大将は、自軍艦船のへさきに箒(ほうき)を掲げたのだという。敵の艦隊なんぞ、ひと掃きにしてくれるわ、という洒落(しゃれ)だ▼先の総選挙も、鳩山大将率いる民主艦隊の船のへさきには箒でもくくりつけてあったか、と思うぐらいの結果だった。自民艦隊は一掃、とまではいかないが、相当手ひどい打撃を被った▼きのう、民主、社民、国民新の三党連立政権が発足、鳩山さんが新首相に就いた。衆議院本会議場では、長く占めてきた議長から見て右側の位置も民主に譲り、自民議員らは野党、しかも比較第二党の悲哀をかみしめていたに違いない▼長く権力の座にあった党である。その間にたまった澱(おり)だの、ほこりだのが新政権によって次々暴かれるのでは、という恐怖も感じていたかもしれない。実際、鳩山さんは「日本を大掃除する」と宣言している▼<新しい箒はよく掃ける>という西洋の諺(ことわざ)があるが、これも新任者は旧弊や旧悪を一掃するにふさわしいといった意味だ。だが視点を変えれば、新政権という<新しい箒>も、その使い勝手を、国民に厳しくチェックされるということである▼それ如何(いかん)では、国民の方が“鳩山丸”の先っぽに箒をぶら下げることもあるから、気をつけた方がいい。それはやはり西洋の風習で、「この船、売ります」の印である。