これも東京の新名所なのだろう。文京区音羽の高台に鎮座する鳩山家の旧邸である。きのう晴れて首相になった由紀夫氏の祖父一郎氏が大正時代に建て、今では一般公開されているこの洋館を見物しておこうという人が引きもきらない。
▼歴史を感じさせるサンルームで談笑する中高年のグループ。美しい庭園で記念写真に納まるカップル。いやはや時ならぬ観光地の風情だが、新政権への注目が生みだした出来事には違いない。首相もここで育ったというから、そう思って邸内を歩いてみれば「宇宙人」などと評される超俗のおもむきに納得もいく。
▼物見高い世の人々はしかし、アラ探しの名人でもあろう。政権交代の4文字に酔ってくれるのも今のうち。「高速道路の無料化ってやっぱりヘンだよ」とか「あの大臣どうもムチャだね」とか、感心はあっという間に寒心に変わりかねない。そうならないよう目配りを欠かさず、大局観を持てる宇宙人なりや否や。
▼かの旧邸はあちこちにハトの装飾が施されている。見応えがあるのは、舞い上がる群れを写したステンドグラスだろう。見物客も目を見張るが、首相ならこれを新閣僚たちの姿に重ね合わせようか。「身震いするような感激」とは初の記者会見の弁だ。世間はもう少しクールに、ハトの群れの行方を見つめている。