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9月17日付 編集手帳

 幕末の歌人、大隈言道(おおくまことみち)に酒の歌がある。〈今日は今日あらん限りは飲みくらし明日の憂は明日ぞ憂へむ〉。愛唱し、かつ実践している身ゆえ、一世一代の祝い酒に酔う人をたしなめるヤボは承知している◆政権交代を成し遂げて昨夜、鳩山由紀夫首相が本物の酒を飲んだかどうかは知らない。「歴史」という言葉の酒は、かなり聞こし召したようである。「ついに今日、歴史がつくられた」等々、その言葉を幾度も語った◆心もとない景気回復の足取りや、ギクシャクしかけている日米関係など、「明日の」というよりは一夜明けてすでに「今日の」憂いの種は目白押しである◆改革はどしどし進めてほしいが、外交には相手があり、内政も一つひとつに過去の経緯がある。白地に絵を描くようにいかず、ときに遠回りや足踏みの忍耐を要する場面もあるだろう。自身を鼓舞する薬としてならば「歴史をつくる」美酒に酔うのをとがめる筋合いはないが、歴史の創造者たるわが辞書に遠回りや足踏みはない――と、悪酔いして柔軟性が失われても困る◆理想も、燗酒(かんざけ)も、舌の焼けつく熱々よりは心もち冷め加減が(うま)い。

2009年9月17日01時32分  読売新聞)
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