中国を筆頭にインドやインドネシア、ベトナムなど一部の新興国経済が元気だ。国際通貨基金(IMF)によると、今年の世界経済はマイナス成長が見込まれるなかで、これらの国々はプラス成長を維持するとみられる。グローバル展開を進める日本企業は、こうした市場に食い込む努力が一層求められている。
例えばインド。2008年10〜12月期の実質成長率は前年同期比5.8%まで低下したが、今年4〜6月期は6.1%に持ち直した。
ロシア・東欧に比べ、アジア諸国は金融危機の影響が限定的だった。1980年代に累積債務問題に揺れ動いたブラジル経済が今回は比較的底堅いのも、金融面の打撃が小さかったからだ。海外の短期資金ばかりに頼らない経済運営が望ましいことが、改めて裏付けられた。
インド経済回復の原動力は個人消費だ。4〜8月の乗用車販売台数は前年同期に比べて12%増えた。携帯電話は毎月1000万件の新規加入が続き、中国を上回る勢いだ。
今年5月の総選挙をにらんで政府が公共投資を増やしてきたことも景気を下支えしている。内需が輸出の低迷を補う構図が鮮明だ。
インドネシアの成長率は今年1〜3月期が4.4%、4〜6月期が4.0%だった。やや鈍化したものの、消費が成長を支えている。
「チャインドネシア」。インドネシアを中印と並ぶ成長エンジンに位置づける、こんな造語が話題になっている。これにベトナムを加えた4カ国の人口は30億人近く。これだけの規模の市場が元気なのは心強い。日本の輸出は前年比30%以上のマイナスを続けているが、中国やインド向けの落ち込みは比較的小さい。
インドの自動車市場ではスズキが大きなシェアを握っている。半面、インドの携帯電話市場では日本メーカーの存在は無いに等しい。それぞれの新興市場に適した価格帯、性能の製品を投入できるかどうかが、グローバル戦略の成否を左右する。
日本の対外戦略も問われる。政府が進める経済連携協定(EPA)の相手国は、農業などであつれきの小さな、比較的小規模の国々が中心だった。成長の押し上げには、もっと大きな国と仲間になる必要がある。