北京五輪の会場「鳥の巣」の設計にも参加した中国の現代美術家アイ・ウェイウェイ氏の作品を東京・六本木の森美術館で見た。茶葉1トンを固めた立方体。自転車42台をつなげた円筒。古寺の廃材を複雑に組み合わせた立体。ユニークな手法で中国の今を描く。
▼どんな作品か、この説明で「?」という方は、ネットをご覧いただきたい。デジカメや携帯電話で撮った展示物の写真を見られるブログがたくさんある。ふつう美術展の多くは館内撮影禁止だが今回は著作権を持つ作家の許可を得た。フラッシュをたかない、非営利目的に限るなど条件付きで撮影も公開も自由だ。
▼気に入ったものがあれば、風景も料理もまず撮影、そしてブログ。そういう時代だ。「お客さまのブログなどを通して、多くの皆さまに展覧会を知っていただきたい」と美術館のホームページは狙いを解説する。法が著作物の再利用をだんだん厳しく制限する流れへの問題提起もあるという。
▼客による撮影を「新しい美術館の楽しみ方にしていきたい。日本の美術館は厳しすぎる」と南条史生館長。アイ氏自身が母国でブログを通じ若者と交流しており、理解があったことも幸いした。時代に合わせ扉を開き、つながりを広げ、味方を増やす。そうすることで結果的に送り手も潤う。そんな試みと言える。