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天声人語

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2009年9月14日(月)付

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 中間管理職たる者、上役の評価は気がかりだが、部下たちの評判にもつい聞き耳を立ててしまう。さる課長は、若手たちから「気のおけない人」と言われていると喜んでいた▼心安い人だ、という好意的な表現である。ところがある時、「気を許せない」という意味で使っているとわかって、しょげてしまったそうだ。英文学者の外山滋比古さんが『日本語の作法』という本に書いている▼この手の悲喜劇がいま、いたる所にありそうだ。文化庁の「国語に関する世論調査」で、いくつかの慣用句の誤用の実態がわかった。たとえば「時を分かたず」は、「いつも」の意味だと正しく答えた人は14%で、67%は「すぐに」だと思っていた▼「御の字」は「大いにありがたい」だが、正答は4割に満たなかった。誤りの「一応、納得できる」が5割を超えていた。商談で「この値段なら御の字」と言われたら、さて、どちらの意味か。「時を分かたず」もそうだが、笑えぬ誤解を生む恐れもありそうだ▼大きな流れで気になったこともある。「言葉に表して伝え合う」のを重く見る人が減って、「察し合って心を通わせる」人が増えていた。居心地の良い「仲間内」で安んじたがるという、昨今の傾向の表れでもあろうか▼「今日(こんにち)は心を軽んじ言葉を愛し、思わぬことでも言ってしまおうとする」と、柳田国男がかつて述べていた。その反動でもあるまいが、「言葉より心」では言語力は細りかねない。言葉のじれったさに向き合ってこそ、「察し合う心」も育まれるように思うのだが。

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