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春秋(9/13)

 「安全第一」は最初、「安全専一」といっていた。明治の末に足尾銅山所長に就いた小田川全之(まさゆき)が、この言葉を考えだし標識を作った。鉱毒事件が起こった後に着任し、対策に追われた経験から、従業員の安全にも目を向けたのだろう。

▼小田川は米国の製鉄会社、USスチールで安全重視の経営に出合った。以前、この会社は生産量の増大を何より優先していたが、危険な作業現場をトップが反省し、「安全最優先」に切り替えたところ、生産効率が上がった。体に負担を強いる工程を減らした結果、ひとつひとつの作業が確実になったためだった。

▼足尾銅山は鉱毒事件がその後の公害問題の原点として記憶され、「安全専一」は忘れ去られた。しかし、小田川がまいた種は産業界に広がり、現在では安全な環境づくりが効率や品質の向上につながるとの考え方が定着した。近年も女性が楽な姿勢で働けるよう設備を改め、不良品を減らした部品会社の例がある。

▼安全への工夫は一見、余計な負担で生産性を下げそうだが逆だった。温暖化ガス削減と経済成長の関係も同じだろう。排出減に知恵を絞れば新産業の芽が出る。首相になる民主党の鳩山由紀夫代表が宣言した「25%削減」には、産業界から不満が噴出している。安全と生産性を両立させてきた歴史を思い起こしたい。

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