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2009年9月13日(日)付

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新政権の日本―女性を生かす社会に

 国会議事堂のリニューアル工事が続く。70年来の汚れをさっぱり落とせば、白い輝きを取り戻した花崗岩(かこうがん)の外壁が年内にも現れる。

 衆院選での民主党の圧勝を受け、顔ぶれが一新された国会で今週、鳩山新政権が誕生する。

 衆院議員の3分の1を新顔が占める。女性議員もこれまでで最も多い54人となり、11.3%と初めて1割を超えた。しかし世界的に見れば、女性議員の比率は134位から120位前後に上がっただけ。胸を張るわけにはいかない。

■女性議員最多の国会

 女性の力をどう生かすか。少子高齢化の時代を迎えた日本にとって、多様な人材を確保し、社会の活力を維持するうえで、きわめて重要な課題だ。

 人々の意識や社会の仕組み。女性の活躍を阻む壁は根強くある。内外ともに生まれ変わる国会には、女性の力を生かす新しい社会づくりに向けての先導役を果たしてもらわねばならない。

 「日本は大改革が必要だ」

 総選挙の投票を控えた先月下旬、英国の経済紙フィナンシャル・タイムズは「日本の有権者はリスクを取らねば」と題した社説でこう指摘し、自民党政権が清新な解決策を提示できていない課題を列挙した。

 経済の再活性化▼高齢化社会への対応▼国際社会で中国が存在感を増す中での外交。選挙戦でも語られたこれらの課題に加え、もう一つが「女性の能力を生かすこと」だった。

 英国はもちろん、世界の多くの国々は女性の潜在力を生かすことに懸命だ。そうしなければ、世界的な大競争の中で生き残れないからだ。

 海の外から指摘されるまでもない。女性の力を生かすことは日本にとって間違いなく重要課題の一つだ。私たち自身がそうした自覚をもっと深く刻む必要はないだろうか。

■労働力の4割は女性

 国連開発計画の指数がある。

 健康で人間らしい生活が送れるかを、長寿、教育、所得で見た「人間開発指数」は08年、179カ国中8位だった。しかし、政治や経済活動への女性の参画状況を示す「ジェンダー・エンパワーメント指数」は108カ国中58位。先進国の中では際だって低い。

 10年前に施行された男女共同参画社会基本法は「男女共同参画社会の実現は21世紀の我が国社会を決定する最重要課題」とする。しかし現実は、指導的立場にある女性の割合を20年までに30%にするなどの目標にはほど遠い。

 その背景に「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という、男女の役割分担についての伝統的な意識がある。内閣府の調査では、07年に初めてこの考えに反対する人が52.1%と半数を超えたが、男性ではなお50.7%が支持している。そしてこの家族モデルを前提につくられた日本のさまざまなシステムは、根強く生き残っている。

 現実には、いろいろな理由で働く女性が増え、労働力人口の4割以上は女性だ。ところが家事や育児、介護などの負担は依然として女性に重く、仕事を続けられなくなる女性も多い。

 約6割が出産を機に仕事をやめるため、年代別の労働力率のグラフを描くと、真ん中の30代がへこんだM字になる。他の先進国では見られない形だ。

 育児休業制度の利用率では、女性の90%に対して、男性は2%と大きな差がある。3割の男性がこの制度を利用したいと答えているが、実際には使えていないわけだ。

■多様な生き方認めて

 「女性の働き方を模索し、働き方そのものに柔軟性が生まれれば、みんなが働きやすくなり、結果的に企業は成長し個人も幸せになる」。INAXの女性活躍推進室長を務める桑原靖子さんはそう話す。

 経済産業省の研究会の報告書「女性の活躍と企業業績」でも、女性が活躍できる風土を持った企業ほど、業績が上がっているとしている。

 報告書は、社会保険や賃金なども、女性に不利にならない中立的な制度に変えることが最重要とする。

 M字形にへこんだグラフを放置していては、日本の将来もへこんでしまうだろう。

 結婚しても姓を変えたくない女性も増えた。結婚以外のかたちを選ぶ人もいる。家族のあり方も多様になってきた。それを認めることは、少子化を止めるためにも欠かせない。

 しかし、日本の民法は明治以来の古い家族観を引きずったままである。

 民主党は選択的夫婦別姓の導入や、婚外子差別の撤廃などの民法改正をめざしてきた。自民党政権下の法制審議会も1996年、この二つの改正を答申した。だが、自民党の強い反対で実現しなかった。

 民主党はこれらの改正を政策集に取り上げた。離婚後300日以内は前夫の子と推定する規定を改正して戸籍のない子をつくらないようにすることや、女性だけにある再婚禁止期間の短縮などもうたっている。

 この政権交代は、21世紀にふさわしい民法に変える、願ってもない好機でもある。財源を心配せずとも社会を前に進めることができる。

 女性が生きやすい社会は、男性にとっても生きやすい。一人ひとりが多様な能力を存分に発揮できる社会へ、永田町からのうねりを期待したい。

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