千葉県の不正経理は五年間で三十億円にのぼる。昨年は十二道府県が会計検査院に不正経理を指摘された。ほかの自治体も同じ問題を抱えたままになっていないか。徹底的に調査してウミを出せ。
「千葉県もか」と言わざるを得ない。自治体の不正経理は二〇〇六年から〇七年にかけて岐阜県や宮崎県などで発覚した。会計検査院が指摘した十二道府県のうち、愛知県は内部調査で不正額が十四億円にのぼった。
千葉県の場合は不正額が飛び抜けている。将棋盤や卓球台に使われていたのには、あきれる。管理職やOBに損害分の返還を求めるだけでは済まされない。私的流用には刑事告訴を考えるべきだ。
手口は愛知県などでもあった「預け」が多かった。事務用品などの購入を装って業者の口座に公金をプールし、その金で業務に無関係な物品や金券を買っていた。
割高で物品を買ったり、金券購入では業者が手数料を上乗せしたケースもあったという。公金を扱う感覚がまひしている。
長年の慣行がモラル低下を醸成してきたようだ。まずは業者との関係を改めなくてはならない。随意契約は極力排除し、物品購入も入札で業者を決めるべきだ。
次々と出てくる自治体の不正経理問題は自治体に自らを調べる能力がないことも明らかにした。
不正発覚の端緒は会計検査院の調査や警察の捜査など、外部機関によるものが多い。内部の監査組織は形骸(けいがい)化して機能せず、外部監査にも限界があるからだろう。
外部監査の権限を強化し、場合によっては新しい検査機関を設けることも検討したほうがいい。自治体の書類と業者の帳簿を照合できる権限と能力があれば、これまで判明した手口の多くは見つけられるし、不正予防にもなる。
予算の使い切り主義も不正の温床といえる。国から地方に渡された補助金は残った場合には国に返還しなければならないが、返したくないから「預け」に走る。
返還手続きが煩雑だったり、返せば翌年度に関係予算が減額されるのではないかという心配もあるのだろう。
だが、補助金も公金である。予算を余らせたら評価を与えるといったシステムを考えていい。
民主党は政権公約で「ひもつき補助金の廃止と一括交付金化」をうたう。国が制度を変えても、自治体が公金の使途について透明性を高め、公務員が意識を改めなければ、分権は意味を失う。
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