HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Fri, 11 Sep 2009 02:18:27 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:国語世論調査 ネットの功罪見極めて:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

国語世論調査 ネットの功罪見極めて

2009年9月11日

 日本語を大切にする人が増える一方、言葉によらない意思疎通を重視する傾向が強まっていることが、文化庁の国語世論調査で明らかになった。矛盾する動きの背景にネット社会の影響はないか。

 今回の調査で「日本語を大切にしている」と答えた人は八割近くに上る。二〇〇一年度調査と比べ7・6ポイント増。特に、若者の増加が顕著で、十代(十六〜十九歳)で28・4ポイント、二十代で16・8ポイント増え、いずれも七割以上だ。

 ここ数年の日本語ブームが一番の要因だろうが、インターネットの影響も考えられる。

 メール以外のネット利用法を聞いた設問に対し、十代、二十代では「一般個人のホームページやブログを見る」がトップ。十代では、ブログなどを公開している人も四割を超えている。

 活字離れが指摘されるが、メールも含めれば、一般個人の間で膨大な量の文章が日常的に読み書きされていることが分かる。そこから日本語に興味を持ち、大切にしようという意識が生まれてきたとみることもできるだろう。

 一方で、読書離れは相変わらずだ。月に一冊も本(漫画、雑誌除く)を読まない割合は十代では約半数。三割強だった〇二年度調査を上回った。言葉を大事に思うことが、読書の面白さに気付くきっかけになってもらいたい。

 人との意思疎通の在り方にも変化が見られた。十年前は言葉を重視する人が半数超だったが、38・3%に減少。逆に、言葉によらず、互いの意思を察し合うことを重視する人が10・3ポイント増えて33・6%に。十代の男性では四割以上が察し合い派だ。

 察し合いは和を尊ぶ日本文化に沿うが、持論を主張する人を「KY(空気が読めない)」として排除しかねない面もある。言語学者の秋月高太郎氏は、ネット上の匿名でのやりとりの中で多用される「うざい」という表現が若者に影響し、「うざい」と思われないよう空気を読むようになったと指摘している。

 ネットがコミュニケーションに影響を与えつつあるようだ。その功罪を見極め、悪影響を減らす努力が必要になってこよう。意思を伝え合う言葉という宝物を、世代を超えて大切にしたい。

 調査の問題点も指摘しておく。回答者の約四割が六十代で、十代は4%にも満たず、バランスを欠く。ネットの影響に関する別の調査が必要なのではないか。

 

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