民主と社民、国民新の三党連立協議がやっと合意にこぎつけた。衆参両院の過半数となる新与党を基盤に鳩山連立内閣は十六日発足する。ただ、合意文書は抽象さが否めない。火種は、やはり残る。
週末を挟んでほぼ一週間をかけた三党の連立協議は、いずれ合意は成るはず、と見られていたせいか、もう一つ切迫感を欠いた。
とはいえ事前に想定されたように民主と社民両党の間で協議が難航したのが、外交や安全保障に関係する文言だった。
ひとことで言えば、実際に政権を担当して、日米外交も無難にスタートさせたい民主の側の「現実路線」傾斜と、社会党時代の自民党との連立で安保論でも変節を強いられたトラウマ(心的外傷)が残り、簡単に譲歩はしたくない社民側の「意地」の衝突である。
衆院選のマニフェスト文書に、日米地位協定の改定提起や米軍再編・米軍基地の在り方見直しを盛り込んでいた民主に対して、社民は合意文書へそのまま明記するよう求め、これに沖縄県民の負担軽減も考慮する旨の文言を加えることで了とした。
衆院で七、参院五議席の少数党として社民は、政策決定への影響力確保へ担保を主張し、内閣への一元化を原則に譲らなかった民主をいら立たせている。巨大に膨れ上がった民主の影に埋没するのを恐れてのことだろう。
一方、ゆうちょ銀行、かんぽ生命株式などの売却凍結といった合意を踏まえて国民新は早々に連立参加を決めていた。社民を加えた連立与党は衆参両院ともに過半数を確保する。多数派が衆参で異なる、安倍政権下の一昨年夏から続いていた「ねじれ」状況は、ようやく解消されることになる。
新政権を待ち受ける国会の波乱要因は当面摘み取られる形だが、大ざっぱな文言に覆われた。例えば米軍普天間飛行場移設問題や民営郵政分社化の見直しなどが具体テーマに上る度に、あらためて対応の詰めを必要とする場面がくるのは避けがたいだろう。
連立参加の社民は、来年夏の参院選で少なくとも現有勢力を維持するようでないと存在の意味がなくなる。国民新も同様だ。民主の側にはもう、参院の単独過半数を実現すれば両党への遠慮は無用だとの声がある。
三党の党首クラスが調整を要する重要政策について協議する「閣僚委員会」の具体像もはっきりしていない。合意はひとまずは成った。が、安定感にはまだ程遠い。
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