三井住友フィナンシャルグループと大和証券グループ本社が法人向け証券会社、大和証券SMBCの合弁解消を決めた。三井住友は米シティグループから買収した日興コーディアル証券を活用し、銀行と証券を融合した総合金融の道を探る。大和は三井住友の出資分を買い取り、独立色の強い証券会社として再出発する。今後は両社が独自に描く成長戦略を早期に打ち出すべきだ。
10日に両社がそれぞれ開いた記者会見では、合弁を解消した後の具体的な経営戦略はほとんど示されなかった。日興はもともと三菱色が強く、三井住友銀行と効果的に連係していけるかどうかに懸念が残る。大和は独立色を強めた後、大企業との取引を増やしていけるかどうか不透明な部分が多い。
異なった業態を選んだ経営判断の成否を判断するのは金融市場を利用する企業や個人だ。
合弁が解消される大和SMBCは金融危機のなかで赤字が続いたものの、市場での存在感は大きい。2008年の日本企業による株式を使った資金調達額で全体の20%(トムソン・ロイター調べ)、日本企業に関連した買収の助言額で13%(同)を占めた。関係の深い金融機関の戦略変更が、自社の資金調達や買収計画に与える影響を懸念する企業もある。戦略が失敗して両社のどちらかの信用力が下がるようならば、不安心理は個人にも及びかねない。
大和SMBCの発足は1999年4月。97年に山一証券が破綻し日本市場に金融危機が広がるなか、大和は親密だった銀行との合弁を打ち出し信用力を補おうとした。三井住友も自力の証券戦略を描き切れず、合弁に法人向けの証券業務を託した。出資比率が大和60%、住友40%となったのは有価証券の引き受けや企業買収の助言は、経験豊かな証券が主導権を握るほうが利益を上げやすいという現実的な判断だった。
こうした前提を覆したのが、リーマン・ショック後の世界的な金融危機だ。大和SMBCは市場の混乱で株式や債券の売買業務が不振。09年1〜3月期まで5四半期連続で最終赤字となった。銀行と証券の合弁という実験的な経営モデルは危機のなかで役割を終えた。