民主党の鳩山由紀夫代表は、二〇二〇年までの温室効果ガス削減目標を公約通り「一九九〇年比25%」に引き上げると明言した。実現への道筋をどのように示すのか。新政権の力量が試される。
麻生太郎首相が六月に鳴り物入りで発表した温室効果ガスの中期削減目標は、〇五年比15%減、一九九〇年比では、8%にとどまり、欧州や途上国グループ、内外の環境団体などを落胆させた。
その主な理由が、温暖化の大きな被害を避けるには「二〇二〇年に九〇年比25〜40%の削減」が必要という、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の科学的判断に遠く及ばないからだ。
25%削減は、IPCCの指摘を満たすだけでなく、米国はおろか欧州の20%をも上回る。鳩山新首相は二十二日開会の国連気候変動サミットで、さっそうと外交デビューを飾ることができそうだ。
だが、本番はその後だ。鉄鋼や電力のような大量排出企業が並ぶ日本経団連などは、国内排出量市場の創設や地球温暖化対策税の導入のような、強制的手法をいとわない民主党の政権公約に危機感を強めていた。国際競争力の低下を盾に、「現実路線」への転換を求める声は一層強くなるだろう。
政府の試算では、25%削減の場合、可処分所得が年二十二万円減り、光熱費は十四万円増えるという。生活者の不安も募る。だが、本当に負担だけなのか。
日本の省エネ技術の蓄積は世界一だといっていい。温暖化対策の進展に伴うビジネスチャンスの飛躍的拡大に、期待を寄せる企業は決して少なくない。「産業界」をひとくくりにしてはいけない。余剰電力の高値買い取りを義務付ける制度改正と補助金の復活で、太陽光パネルの需要は再び伸びた。あながち負担だけでもない。
化石燃料依存の暮らしは、もう長くは続かない。必要なのは数値目標の達成ではなく、低炭素でも、いや低炭素だからできる豊かな社会への転換だ。
新政権にはそこに至る道筋をわかりやすく示してほしい。削減の負担だけを強調せず、利益も数え上げながら、明言通り「あらゆる政策を総動員」して、25%削減への具体的なメニューと工程表を速やかに提示すべきだ。それなしでは私たちは議論も理解もできないし、協力もできなくなる。
高い目標を達成するには、言うまでもなく政治の強いリーダーシップが欠かせない。
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