「鳩山内閣」の主要閣僚が固まりつつある。民主、社民、国民新三党の連立協議も大詰めだ。新政権を軌道に乗せるには、人事や連立政権の運営ルールを、事前にしっかり詰めておくことが肝要だ。
国家ビジョンや予算の骨格などを決める国家戦略局担当相には民主党の菅直人代表代行が就く。この組織は、各省の縦割り行政を官邸主導に転換するのが狙いで、「脱官僚依存」の目玉でもある。
菅氏は厚相当時、薬害エイズ関連資料の存在を暴き、責任回避を企図した官僚行政に風穴を開けた。脱官僚の実現には適役だ。
外相となる岡田克也幹事長は、党代表当時の二〇〇五年に発表した外交ビジョンで、日米関係発展のため、日本自身に役割と責任を果たす自覚を求めるなど「対等な日米同盟」路線の基礎を作った。
鳩山由紀夫代表が、菅、岡田両氏、幹事長となる小沢一郎代表代行ら代表経験者を政府や党の要職に配し、信頼する平野博文役員室長を官房長官に起用したことからは、新政権への意気込みがうかがえる。ほかの人事も有権者の期待を裏切らないよう願いたい。
鳩山氏には首相就任後、国連総会や日米首脳会談、G20金融サミットなどの外交日程が控え、岡田氏も、北朝鮮の核開発問題への対応などの外交課題が山積している。菅氏にとっては、〇九年度補正予算の見直しや、一〇年度予算編成が待ったなしだ。
政治・外交課題を着実に処理し、有権者の信頼を勝ち取るためには、緻密(ちみつ)で周到な準備が必要だ。心して取り組んでほしい。
政権運営の在り方で注目されるのが、閣僚や副大臣、政務官などとして与党の国会議員百人以上を政府に配置して進める政府・与党の政策決定一元化だ。
社民、国民新両党は与党間の政策調整機関設置を求めているが、民主党側は、福島瑞穂党首、亀井静香代表を閣内に迎え、党首クラスの協議機関設置で両党の理解を得たい考えという。
連立に参加する社民、国民新両党の意見を政策に反映させるのは当然としても、与党間の政策調整機関を置けば、政党が閣外から内閣を支配する二重権力との批判を招きかねない。こうした可能性は排除した方が賢明だろう。
新政権発足後に混乱を来さないためには党首同士が胸襟を開き、安全保障政策を含む連立運営の基本的事項に合意しておくべきだ。何事も最初が肝心なのである。
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