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社説1 ダムのムダ 理由を明確にして見直しを(9/8)

 民主党は大型公共事業を全面的に見直す方針を打ち出している。4年間で公共事業費を1.3兆円減らすとマニフェスト(政権公約)に明記し、時代に合わない無駄な事業として熊本県の川辺川ダムと群馬県の八ツ場(やんば)ダムをあげている。

 無駄な公共事業を見直す姿勢は評価したい。特に、川辺川ダムは地元の知事らが環境面の影響などを理由に白紙撤回を求めている。国土交通省はダムなしの治水対策を早急にまとめ、中止に踏み切るべきだ。

 一方、八ツ場ダムは洪水を抑える機能だけの川辺川ダムとは事情が異なる。関東地方に水道水や工業用水を供給する役割がある。

 八ツ場ダムの恩恵を受ける1都5県はすべて早期の完成を望んでいる。大阪、京都、滋賀、三重の4府県が中止を求めている淀川水系の大戸川ダム(滋賀県)とは対照的だ。

 民主党が主張するように八ツ場ダムはずさんな公共事業の典型例ではある。当初計画では2000年度だった完成予定は10年度に一度延期され、現在は15年度に延びている。総事業費も当初の2110億円から4600億円へ2倍強膨らんだ。

 建設予定地の地盤を不安視する声もある。なぜ計画が何度も変わったのか検証し、再び事業費が増える可能性はないのか調査すべきだが、こうした検証や調査と、ダムの必要性の議論は分けた方がいい。

 八ツ場ダムに反対する住民グループは、1都5県が策定した水需要の将来推計は過大だとして、各地域で訴訟を起こしている。すでに判決が出ている3都県では住民側がすべて敗訴した。判決は「都の将来の水需要の予測に不合理な点はない」(東京地裁)、「水源が必要という県の主張は裁量の範囲内」(前橋地裁)と、計画の妥当性を認めている。

 「八ツ場ダムは無駄だ」と主張する民主党は、その理由をていねいに説明する必要がある。ダム建設関連ですでに支出している約3200億円の4割強は都や県が負担している。「中止するなら当然、返還を請求する」(石原慎太郎都知事)と自治体は主張している。

 水没予定地の住民の今後も心配だ。地元では代替地の建設が進み、住民の移転も始まっている。ダム事業がどうなろうと、国は住民の生活再建に一定の責任を負っている。

 国の大型公共事業は一度計画されると止まらないといわれ、中止する場合の手続きも定まっていない。ダムに限らず、必要性や代替案を検討し、中止のルールを決めたうえで、見直しを進めるべきだ。

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