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鰯(いわし)の頭も信心から、という。値打ちがないものでも信仰すればありがたい。この格言、からかい半分ながら、無から有を生む宗教の底力を言い表す。ひとたび信じた鰯の頭にあれこれ価値が加われば、信者の喜びはいや増そう▼金沢市の宗教家(62)が、自分のDNA情報を添えた「ご神体」で荒稼ぎし、金沢国税局に約10億円の所得隠しを指摘された。口内粘液から得たという情報を電子チップに刻み、きれいなガラス柱に張りつけた置物だ▼病気が治ると称し、原価の約20倍の100万円で1100個売ったという。「教祖様の分身」に治癒の気力をもらった人もいようが、どうにも利ざやが大きい。装いこそ今風でも、商いの手口は古くさい▼週刊ダイヤモンドの最新号が「新宗教」を特集している。昨今は広く薄く、教祖の本などで明朗に集金する「コンビニ型」が主流らしい。1人から100万円より、100人から1万円ずつ。「少数の信者から身ぐるみはがすようなやり方は長続きしない」という▼他方、長続きとは別の魂胆から、宗教の公益性を隠れミノにした税金逃れが後を絶たない。5億円超を追徴されたDNAの主も、課税で優遇される宗教法人の買収に熱心だったと聞く。宗教家は「国を養うロマンのつもりで当局の指摘に従った」そうだ▼宗教という精神世界で身を立てながら、先端科学を都合よく拝借しては、「いいとこ取り」でひともうけと見られるだけだ。純であるべき信仰の対象を、欲得の能書きでゴテゴテ飾るものではない。鰯の頭に失礼である。