<草茂みベースボールの道白し>。明治初期に、米国から伝わった球技に魅了された正岡子規は、自らチームをつくって白球を追い、「打者」「走者」「四球」などの訳語を残した▼維新後の日本人が初めて接したこの団体競技は、まず大学生などのアマチュアに広がる。草創期の指導者は、猛特訓や自己犠牲などの「精神主義」を注入、ベースボールは似て非なる「野球」として発展を遂げた▼その野球の国から本家に渡ったマリナーズのイチロー外野手がまた大記録を打ち立てた。メジャーリーグ通算2000安打。一九〇〇年以降にデビューした選手の中では史上二番目の早さだ。メジャー初の九年連続200安打にもあと5本に迫った▼コメントが心憎い。メジャーリーグの試合数が多いことを挙げて、「日本で2000本を打つ方がずっとすごいんじゃないかなと思う」とさらりと言った▼グラウンドにバットを置く時、湿気が伝わらないようにボールが当たる面を必ず上に置くという。グラブやバットを大切にして手入れを欠かさない繊細な感覚は、やはり野球の国から来た人だと思わせる▼肺結核によって、子規が三十四歳十一カ月で亡くなったのは、百七年前の今月十九日。イチロー選手の年齢とほぼ同じだ。自ら夢と語っている「五十歳現役」を目指し、多くの人たちに勇気と希望を与え続けてほしい。