憲法をテーマにした講演を聞いた時、妙に記憶に残った言葉がある。「押し掛け女房でも、よい女房はいる」。語ったのは民主党の鳩山由紀夫代表だった▼二〇〇四年十二月に自らの「新憲法試案」をまとめた直後だった。米国の強い影響下で憲法が制定されたことを認めながら、明文化された国民主権や基本的人権、平和主義などの原則は評価すべきだと語っていた▼「鳩山試案」の特徴は、交戦権を否認した九条二項を「最も欺瞞(ぎまん)的な部分」と批判したうえで、「自衛軍保持」を明記。集団的自衛権についても、制限的な行使を容認した点だろう。しかし、総選挙の論戦中、鳩山氏が自らの改憲論を訴える場面はほとんどなかった▼日教組出身から、自民党出身の保守派までが混在する民主党議員の憲法観は左から右までバラバラだ。マニフェストでも憲法問題は、最後に触れられていただけだった▼社民党の福島瑞穂党首は、衆参両院の憲法審査会の凍結を連立政権への参加条件とする考えを示しているが、民主党内には反発もあるようだ。政権維持と信念との間で鳩山代表も悩ましいところだろう▼憲法調査会をリードした自民党は衆参両院で第二党に転落、憲法改正の主導権を握ることは当面なくなった。注視したいのは民主党の憲法論議の行方だ。新人議員たちが、どんな憲法観を持っているのか聞いてみたい。