HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Last-Modified: Sat, 05 Sep 2009 17:04:27 GMT ETag: "3a92ea-4423-9bf67cc0" Content-Type: text/html Cache-Control: max-age=5 Expires: Sun, 06 Sep 2009 03:21:11 GMT Date: Sun, 06 Sep 2009 03:21:06 GMT Content-Length: 17443 Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
現在位置:
  1. asahi.com
  2. 天声人語

天声人語

アサヒ・コム プレミアムなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

2009年9月6日(日)付

印刷

 時に、男という性を返上したくなる報道に出会う。昨秋、大阪府内で男2人に襲われた女性が、事件の4日後、警察にすべてを話した上で命を絶った。結婚を控え、式場を探していたという▼字にも口にもしたくない強姦(ごうかん)の語には、「乱暴」「レイプ」では伝えきれないおぞましさが宿る。無論、被害者の痛み、悔しさは言葉で尽くせるはずもない▼女性2人を襲い、強盗強姦などの罪に問われた男(22)に、青森地裁で求刑通りの懲役15年が言い渡された。性犯罪では初の裁判員裁判。弁護側は懲役5年が適当としていた。男性の裁判員は「被害者の気持ちを理解するのは、非常に大変な心の作業でした」と語る▼「女性として一番ひどいことをされた」という叫びは通じたが、負担は大きい。被害の詳細が法廷で再現され、6人中5人を男性が占めた裁判員には、被害者の声ばかりか姿もさらされた。もっと訴えやすくする工夫が要る▼つらい体験を著書『性犯罪被害にあうということ』で明かした小林美佳さんは記した。「それまでの二十四年間を過ごしてきた私が、消えた……すべてが洗い流されたように感じた」。泣いては吐きの日々。雑踏では異臭を放つ動物のように見られている気がしたという▼法曹界が長らく男性社会だったこともあろう。これほどむごい強姦罪の法定刑がなぜか強盗より軽い。殺人に等しい冒頭の事件も、判決は懲役7年までだった。強盗がついたとはいえ、厳罰の側に張りついた市民感覚を支持する。次からも、最たる女性差別を痛撃してほしい。

PR情報