HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 05 Sep 2009 00:18:31 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:性犯罪裁判 被害者保護を徹底せよ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

性犯罪裁判 被害者保護を徹底せよ

2009年9月5日

 裁判員裁判で審理された青森地裁の強盗強姦(ごうかん)罪の公判は被害者保護に課題を残した。被害者が再び傷つくことはあってはならない。今後、裁判員制度からの除外を検討すべき事件も出てこよう。

 二〇〇六年と〇九年に女性二人を暴行し、現金を奪った男に青森地裁は四日、懲役十五年を言い渡した。性犯罪としては全国で初めて裁判員裁判で審理された。

 この「青森事件」はこれからの裁判員裁判で性犯罪事件を扱う際のモデルケースとして検討されていくだろう。

 被害者の氏名や年齢、住所は伏せられた。被害者の意見陳述は別室からモニターを通じて行う「ビデオリンク方式」が採用され、被害者の姿は裁判官と裁判員にはモニターで見えたが、被告や傍聴人は音声を聞くのに限られた。

 裁判所と検察側は公判で被害者のプライバシーに配慮を示した。それでも、被害者が傷つく懸念が払拭(ふっしょく)できない。

 裁判員裁判では口頭での説明が重視され、検察側は犯罪状況を詳細に述べたという。「調書をそこまで読む必要があったのか」と疑問視する傍聴人の声もある。量刑を決めるうえで重要で、裁判員が遺漏なく知るべき証拠なら、書面でもよかったのではないか。

 被害者の一人は「一言伝えることで刑が重くなるならと思って来た」とモニターを通じて語った。陳述するまでには迷いがあり、勇気と覚悟が要ったはずだ。

 事件後も悪夢にさいなまれ、法廷での検証が精神的苦痛となる被害者がいる。被告と傍聴人から見えないとされても不安を取り去るのは難しい。裁判員に姿を見られることにもためらいがあろう。

 否認事件や事実関係で争いがある場合は、裁判員が意図しなくても被害者を傷つける質問が出る可能性がある。一方で裁判員も、性犯罪事件の実態に耳を傾けることは精神的な負担が大きい。

 市民団体から「性犯罪を裁判員制度の対象から外すべきだ」と意見が出ている。被害者保護ができないおそれがある場合は制度からの除外も含めて議論すべきだ。被害者が裁判員裁判をおもんぱかり、被害届を出さずに泣き寝入りするような事態があってはならない。

 この事件で裁判員構成は男性五人、女性一人で、求刑通りの判決だった。今後、性犯罪事件の判決に偏見が生じるようなら、裁判員の男女比を調整できる仕組みも考えなくてはならないだろう。

 

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