民主党の次期幹事長に小沢一郎代表代行が就任する。来年の参院選勝利を目指した人選だが、鳩山由紀夫次期首相のリーダーシップを弱めることにならないか。二重権力構造に陥らぬよう求めたい。
小沢氏は今回の衆院選で、候補者選定や選挙戦術を主導し、民主党を圧勝に導いた。代表として臨んだ二〇〇七年の参院選でも第一党になる勝利を収め、安倍晋三首相を退陣に追い込んだ。選挙手腕に定評がある小沢氏の幹事長起用が、来年の参院選で民主党を再び勝利に導き、政権基盤を固めるためだということは理解できる。
衆参両院で四百人以上に膨れ上がった大所帯を束ねるために、これまでの豊富な政治経験が必要とされた事情もあるだろう。
ただ、小沢氏の幹事長就任で、二重権力構造になるのではないか、との懸念が早速出ている。
それは、小沢氏がかつて政党幹部として、内閣の外から政権を支配してきたからにほかならない。
小沢氏は一九八九年に自民党幹事長に就任すると、当時、最大派閥だった竹下派の「数の力」を背景に、海部内閣をコントロール。さらに、九三年から九四年の非自民連立政権下では新生党代表幹事として各派代表者会議を取り仕切り、内閣を牛耳った。
いずれも小沢氏の強引な手法や説明不足が反発を招いて政権の不安定化につながり、特に細川内閣は八カ月の短命に終わった。
民主党が、予算などの骨格を決める首相直属の「国家戦略局」創設や、政府に国会議員約百人を配し、政治主導で政策を決定する「政府・与党一元化」を衆院選マニフェストで主張したのも、政府と与党が別々に政策決定する従来の二元体制から脱却し、二重権力に陥る危険性を排除するためだ。
鳩山代表は小沢氏への幹事長就任要請にあたって「幹事長は党務なので、政府の中に入って仕事をするわけではない。権力の二重構造にはならない」と強調した。
しかし、今回の衆院選を経て、小沢氏に近い議員は百人を超えたとされる。小沢氏がこの「数の力」を背景に発言力を強めれば、政府の決定に口を挟みだす可能性がないとは言えない。
小沢氏が過去の「失敗」を省みないとは思いたくないが、鳩山内閣が二重権力構造が原因で動揺する事態になれば、政権交代を望んだ有権者の期待を裏切り、細川内閣の二の舞いになる。このことだけは肝に銘じてもらいたい。
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