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小沢幹事長―企業献金に自らとどめを

 民主党の新幹事長に、小沢一郎前代表が就くことになった。政府は鳩山首相、党務は小沢氏、という新政権の基本構図ができた。

 「二重権力」になるのではないか。「闇将軍」にならないか。そんな懸念が党内外で語られてきた小沢氏の起用だが、鳩山氏の意図は明確だ。

 第一は、来夏の参院選対策だ。

 勝利すれば、衆参両院で民主党単独で過半数を固め、政権の基盤を盤石にできる。逆に、負けるようなことになれば、民意の旗じるしを野党に奪われ、政権運営は一気に難しくなる。

 そのために小沢氏の手腕に頼りたい、ということだろう。07年の参院選、そして今回の衆院選を大勝に導いた小沢氏の力量は証明済みだ。

 第二は、西松建設からの違法献金事件で秘書の公判を控える小沢氏を、閣僚として政府に抱えるわけにはいかない、というリスク管理である。閣僚は国会で答弁に立たねばならず、野党の追及にさらされる。展開次第で政権がつまずく危険もある。

 幹事長は党のナンバー2であり、選挙のほか国会対策、政治資金の配分などで大きな権限を握る。小沢氏としても不満のない人事といえるだろう。

 不安がないわけではない。140人を超える初当選組の大半は小沢氏が擁立し、面倒を見てきた。巨大化した民主党で、小沢氏の影響力、存在感もまた巨大になっている。

 小沢氏も、「二重権力」を警戒する視線を十分、意識しているに違いない。かつて海部政権や細川政権で与党側の実権を握り、政権を牛耳った過去がある。その後も政党再編を仕掛けては失敗した。説明不足、強引、独断専行……。そんな批判を浴びてきた。

 今回も、同じ轍(てつ)を踏むことはないか。鳩山氏がいくら「心配はない」と打ち消しても、それが本当かどうかは、やはり小沢氏自身の行動で示してもらわねばならない。

 それには、名実ともに鳩山氏のリーダーシップを支える姿を明確にすることだ。定例の記者会見などに積極的に応じることも欠かせない。政権交代の実をあげるために経験と力を生かし、党を束ねていってもらいたい。

 西松事件は終わっていない。前社長の判決で、小沢氏の秘書が公共工事の談合に強い影響力を持っていた事実が認定された。巨額献金の背景について誠実に説明する必要がある。

 政官業の癒着を排するという民主党政権の姿勢を鮮明にするためにも、企業・団体献金の全面禁止を秋の臨時国会で仕上げる先頭に立つべきだ。

 小沢氏の処遇が決まったことで、閣僚人事が本格的に動き出した。鳩山氏は国家戦略局担当相、財務相、外相ら主要閣僚を早く固め、現政権との政権移行作業を加速させることだ。

新型インフル―対策に空白は許されない 

 新型の豚インフルエンザの流行が止まらない。新学期が始まったが、初めから学級閉鎖したり、休校したりした学校もある。

 健康な人のほとんどは軽症ですむ。だが、持病を持つ高齢者だけでなく、比較的若い人にも重症例が報告されている。決して油断はできない。

 厚生労働省によれば、国民の5人に1人が感染し、1日に4万人以上が入院するような大流行のピークが、早ければ今月末にもやってくる。再来週に発足する予定の鳩山政権にとっては、いきなりの試練である。

 民主党は、政権移行期の最重要課題としてインフルエンザ対策を挙げた。準備や対策に政権交代に伴う空白があってはならない。関係省庁や自治体は対策にいっそう力を注いでほしい。

 今、対策の一つであるワクチンに大きな関心が集まっている。ワクチンは、感染を防ぐ効果は決して高くないが、重症化は防げるとされる。

 厚労省が必要と見込む5400万人分に対して、来年3月までに製造できるのは1800万人分だ。先進国の中で製造能力の低さが際だつ。

 不足分は輸入品でまかなう方向だ。だが、使い慣れない輸入品の安全性に不安を抱く医師もいる。インフルエンザのワクチンは、ごくまれだが重い副反応が起きることもあるからだ。

 厚労省は昨日、対象者のうち、どんな人に優先的に接種するか、案をまとめた。まず医療従事者や妊婦、持病を持つ人、1歳以上の乳幼児、1歳未満の子の親が対象となる。次に、重症化しやすい高齢者や、重症化のおそれは低いが感染が広がりやすい小・中・高生が挙げられた。

 国産ワクチンの不足を輸入品でどこまで補うのか。接種の目的が異なる対象グループの、どの範囲まで接種するか、しっかりした根拠に基づく方針を示し、ワクチンの効果や限界とともに、国民に丁寧に説明していく必要がある。

 いずれにせよ、ワクチンの接種が始まるのは10月末以降だ。今月末からのピークには間に合わない。それ以外の対策を怠ってはならない。

 重症患者の急増に対応できるような医療態勢の整備は優先課題だ。地域での医療機関の役割分担も欠かせない。

 早めに飲めばウイルスを減らす効果が期待できるタミフルなどの抗ウイルス薬もある。うつったり人にうつしたりしないよう、一人ひとりの行動もかぎを握る。大流行はおそらく避けられないが、過度に恐れる必要はない。

 社会の混乱を招かないよう、新政権は危機管理の態勢をできるだけ早く整えることが必要だ。そのうえで国民が落ち着いて行動できるよう、専門家の助言に基づく正確な情報をタイミングよく伝えてほしい。

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