HTTP/1.1 200 OK Date: Thu, 03 Sep 2009 23:18:29 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:日米関係 信頼構築の奇貨とせよ:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

日米関係 信頼構築の奇貨とせよ

2009年9月4日

 鳩山民主党代表がオバマ米大統領と電話会談した。米紙に掲載された鳩山論文が「反米的」とされた問題の沈静化が目的だったが、政権交代を前に、互いの信頼関係をつくる奇貨とすべきだ。

 日本の総選挙結果は米国でも大きく報道されたが、一般市民の間では今もって「鳩山、フー?」が実態に近い。

 米紙に掲載された鳩山論文は米市民が日本の次期首相の政治信条に初めて接しうる機会でもあった。その内容が、市場主義経済や日米同盟など、米国が掲げる基本的価値観を仮に否定するものだったとすれば、反発が起きるのもある程度理解できる。

 もともとの鳩山論文は「Voice」誌九月号に掲載されたものだ。「私の政治哲学」と題した論文で、鳩山代表は、自身が掲げる友愛精神が欧州連合(EU)の淵源(えんげん)となったクーデンホーフ・カレルギー伯の唱えた「フラターニティー」に根差すことを強調し、自らが目指す政治的方向性として地域統合を進めるEUの理念を掲げた。一貫しているのは冷戦後のグローバリズム、米一極主義で顕著となった市場原理主義の行き過ぎが生んだ様々(さまざま)な負の遺産に対する批判だ。

 米紙に掲載されたのは「日本の新しい道」と題された抄訳だ。概(おおむ)ね忠実な翻訳といえるが、日本の読者を対象とした文章がそのまま米国、そして英語が支配的な国際的文脈の中で同じ伝わり方をするとは限らない。

 「フラターニティー」という言葉自体、欧州では中世の宗教共同体以来の意味が強く、米国では大学における秘密結社的な私的クラブを連想させる。自由主義を信奉する米英的保守思想から見れば社会主義的試みに映る欧州統合を理想視することへの戸惑いもあろう。「対等な日米同盟」を掲げつつ、対米外交、防衛政策について曖昧(あいまい)なままでは、様々な受け取られ方をされてもやむを得まい。

 この機に電話会談を持ち掛けて沈静化を図ったオバマ大統領の対応は迅速で、日本重視の姿勢をアピールするものでもあった。大統領と強い個人的関係を持つルース駐日米大使の赴任直後だったことは象徴的だ。

 経緯はともかく、これで民主党に対する国際社会の関心は高まった。「同意しないことに同意する」外交にも基本的な信頼関係は欠かせない。国際的に通用する明快な言葉を身に付けることが急務だろう。

 

この記事を印刷する