民主党が麻生内閣に、政権の引き継ぎに向けた協力を要請した。政権が代わるからといって、政治空白は避けなければいけない。円滑な政権移行のためには新しいルールを作ることが必要だ。
民主党の岡田克也幹事長が河村建夫官房長官に求めたのは、二〇〇九年度予算の執行状況や新型インフルエンザ対策、九月以降の外交日程などに関する情報提供だ。
麻生太郎首相も河村氏に「スムーズな政権移行に協力してほしい」と指示した。当然のことだ。
衆院選から新政権誕生までの政治空白を避け、新政権発足後の円滑な政策執行を図るには、現政権の協力が不可欠だ。政権交代のたびに政治が停滞しては、政治への国民の信頼を失うことになる。
与謝野馨財務相は四日からロンドンで開かれる二十カ国・地域(G20)財務相会合への出席を見送り、代わりに竹下亘財務副大臣が派遣される。石破茂農相、二階俊博経済産業相も三日からインドで開かれる世界貿易機関(WTO)非公式閣僚会合出席を取りやめ、両省は審議官を送り込む。
国際会議に大臣が欠席したからといって直ちに国益を損ねることはないかもしれないが、政権交代のたびに閣僚が出席を取りやめ、代わりに官僚の出席が常態化するのは、正常な姿ではないだろう。
現政権が政権移行期の国際会議にどう臨むか、足元が定まらないのも、自民党が一九五五年の結党以来、衆院選での第一党転落による政権交代を経験せず、政権をいかに円滑に引き継ぐか、考える必要に迫られなかったからだ。
政権交代が当たり前になっている米国では、新旧政権の情報共有など、政権引き継ぎの方法がすでにルール化され、その費用は連邦政府が負担することが法律で定められている。
政権移行期間が二カ月あまりと長い米国と同じ制度をつくる必要はないが、日本でもある程度ルール化することが欠かせない。
今回の衆院選で明らかになったのは、選挙による政権交代が夢物語でないということだ。そうした状況下で、政権交代期の政治空白をいかに少なくするのかは与野党を問わず政治の責任だ。
自民党には、衆院選で民主党に敗北した悔しさはあるだろうが、政権引き継ぎには積極的に協力すべきだ。その度量の大きさが、選挙戦で訴えてきた責任政党のあるべき姿を示すことにもなる。
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