坂本九さんの歌ったオリジナルとは歌詞が違う、ウルフルズの『明日(あした)があるさ』という曲をご存じだろうか。中に新しい上司はフランス人 ボディーランゲージも通用しない…というくだりがある▼二〇〇一年の曲だから、念頭にあったのは、きっと日産のカルロス・ゴーン社長だろう。日本人社員らの戸惑いがうかがえるが、今、霞が関の官僚たちも、民主党という“新しい上司”を迎えることになって同じような心持ちか。いや、もっと強烈かもしれない▼思い出すのはフランスの前身フランク王国の王クローヴィスの話。五世紀末、王妃の勧めで正統派カトリックに改宗したが、この時、ランス司教聖ルミが王に告げた言葉がよく知られている。「汝(なんじ)の焼きたるものをあがめ、あがめたるものを焼け」▼かの国では「それまでの考えを捨て、新たな考えを受け入れよ」という意味の諺(ことわざ)として通用している。長い間、自民党政権と密着してきた官僚たちだ。「官僚主導」打破を掲げる民主党は“改宗”を迫り、彼らに同じ台詞(せりふ)を投げかけるに違いない▼もっとも、やる気も出してもらわねば政策実行は覚束(おぼつか)ない。民主党とすれば、あの歌の続きのように前向きにとらえてほしいところだろう。これはチャンス これはチャンス 勉強しなおそう…▼民主党と霞が関。さて、この新たな組み合わせに明日はある…か?