新学期が始まり、新型インフルエンザウイルス感染が学校を中心に急速に拡大している。感染拡大防止の重要性は政権交代しても変わらない。途切れることなく全力で取り組んでもらいたい。
厚生労働省によると、八月二十四日から三十日までに休校や学年・学級閉鎖した保育所、幼稚園、小中高校、休業した社会福祉施設は全国で二百九十九施設に及んだ。ほとんどが新型の流行によるものとみられる。
成人を含めた国内の累積感染者は五千人を超し、死亡者は八月末までに八人を記録した。多くは糖尿病など基礎疾患を持ち、半数は五十〜八十歳代だが、長野、兵庫県では三十歳代で亡くなっている。
感染しても発症を防止したり、重症化を防ぐにはワクチン接種が最も有効だが、国内で年内に製造・供給できるワクチンは千三百万〜千七百万人分にとどまる見込みだ。不足分を海外から輸入する方法もあるが、海外産のワクチンには免疫増強剤が添加されていて日本人の子どもは熱性痙攣(けいれん)を起こす頻度が欧米の子どもよりも高い難点があることが指摘されている。
安全性の観点からできるだけ国内産を接種することで多くの専門家の見解は一致しているが、問題は限られた量のワクチンをどの集団から優先的に接種するかだ。
厚労省検討会が審議中で今月中に結論を出すが、診療に当たる医師や看護師など医療従事者、感染すると重症化しやすい妊婦や乳幼児、年齢に関係なく重い基礎疾患のある患者らに優先的に接種するのに異論はないだろう。
国内産といえども有効性や安全性はまだ確認されていない。新型の大流行を控え、大掛かりな臨床試験が無理でも可能な限り安全性の確認はすべきだ。接種開始後も副作用の発生情報の把握に努め、臨機応変に対応すべきだ。
ワクチン接種は重要だが、万能ではない。感染防止のため帰宅後の手洗いや症状が出た場合の咳(せき)エチケットの徹底は欠かせない。
医療機関でも症状のありそうな患者とそうでない患者との分離、医療従事者自身の専用マスク着用などを心掛けたい。
厚労省は来年度予算の概算要求に、新型インフル対策として本年度当初より六十三億円多い二百七億円を盛り込んだ。ワクチンの買い上げのほか、医療機関の人工呼吸器購入の国庫補助などだ。
国民の不安解消のために、次期政権は新型インフル対策をさらに強力に進めることが求められる。
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