衆院選に圧勝した民主党の政権移行作業が本格化している。政権公約で掲げた「政治家主導の政治」を確立するには、まず政策決定の舞台づくりで主導権を握らねばならない。スタートが肝心だ。
今回の政権交代は自民党時代に長く続いた霞が関官僚に依存した政策運営から、政治家が政策を立案、調整、決定する枠組みに改めようとしているところに、もっとも大きな意義がある。
民主党は首相官邸に国家戦略局を新設し、そこで予算編成をはじめ国家運営の骨格を決定する構想を示してきた。予算編成は税制改正と並んで、あらゆる政策の根幹をなす。まさに「政治」そのものといえる。
これまでも政治主導が叫ばれながら実質的な成果が上がらなかったのは、予算編成で政治家が指導力を発揮できなかったためだ。政治家同士の利害調整は「足して二で割る」方式がまん延し、結果的に毎年の予算配分は、わずかな微調整だけで固定化された。
各省縦割りの霞が関官僚はそんな政治決着を逆手にとって、自分たちの縄張りを互いに守り合ってきたといえる。その意味で官僚主導体制を支えてきたのは、実は政治家だったという面もある。
したがって、本当に脱官僚依存を実現できるかどうかは、まず民主党自身の力量にかかる。次に、基本政策の決定過程で従来のような官僚の強い影響力を排除する仕組みづくりが必要だ。
官僚は基本的情報と政策の選択肢を示す。国民から権限を負託された政治家が最終決定する。この基本原則を貫かねばならない。
民主党政策を批判してきた事務次官たちは「政権の方針を聞いて対応する」とひとまず低姿勢の様子だ。それでも、霞が関が簡単に既得権益を手放すはずもない。霞が関の一部には、影響力を行使するために、はやくも政策決定の中核となる国家戦略局に「どの省が何人送り込む」といった噂(うわさ)が駆け巡っている。
役人の天下り天国と化した独立行政法人には施設整備費補助金や委託費など潤沢な予算がついたままだ。予算編成を根本から見直して、官僚の既得権益を断ち切ろうとすれば、各省と正面衝突する局面も十分に予想される。
まず組閣と官邸を支える官僚人事、そして外交案件と政権が忙しく動きだす。官僚に主導権を奪われぬよう、予算編成・税制改正を含めて政治日程は慣例にとらわれず柔軟に考えていい。
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