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天声人語

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2009年9月2日(水)付

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 ものを書くときに形容詞の扱いは難しい。うまく使えば引き立つが、下手だと言葉は浮いてしまう。文章は形容詞から腐ると言ったのは、たしか作家の開高健だった。飾り言葉は美味(おい)しいだけに朽ちるのも早い▼古い記事を読んでいたら、中曽根元首相が、当時新党さきがけの代表幹事だった鳩山由紀夫氏に注文をつけていた。「政治は、美しいとか、キラリと光るとか、形容詞でやるのでなく、動詞でやるものだ」と。13年前、旧民主党を結成する直前のことである▼辛口の意見に、鳩山氏は「行動の前に哲学的な形容詞を大事にするべきではないか」と反論していた。政治スタイルや人生観の違いだろう。氏は今も、「愛のあふれる」といった、扱いの難しい言葉を好んで語る。哲学を重んじる姿勢は変わっていないようだ▼政治に力強い動詞は欠かせない。政策を進める意志である。動詞なき形容詞は、絵に描いた餅の飾りにすぎない。とはいえ形容詞を欠く動詞もまた、やせ細った政治だろう。持ち味の形容詞を腐らせない実行力が、いよいよ試される▼16日には特別国会が召集されて首相指名を受ける。就任会見や所信表明での一言一句が吟味され、そこから先は容赦のない現実が待つ。言葉で訴えたもろもろの実(じつ)が問われる。期待のすぐ横に失望の奈落が口を開けているのは、新政権の常である▼「言行一致の美名を得る為には、まず自己弁護に長じなければならぬ」と皮肉屋の芥川龍之介は言った。せっかくの形容詞が、そのために乱れ飛ぶようでは、国民は失望する。

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