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8月30日付 編集手帳

 立原道造が〈Hに、手紙を書く〉と日記に(つづ)ったのは1930年(昭和5年)の6月、詩人は15歳である。〈Hから返事は来ないだらう。また、悲しみと、懐疑と、焦燥の種を()いた〉◆思慕の情を寄せる少女か、ささいなことで仲たがいをした級友か、Hがどういう人かは分からない。いずれにせよ甘酸っぱく、ほろ苦く、青春期ならではの陰翳(いんえい)をもつ手紙であったろう◆青春が遠い過去になった身にも何年かに一度、似た心境で鉛筆を握る時がめぐってくる。投票用紙は「あなたを信じています」と告げる手紙に違いない◆「期待しては裏切られてきたな」という悲しみと、「公約は大丈夫?」という懐疑と、「暮らしは待ったなしだよ」という焦燥と、投函(とうかん)する人の気持ちはさまざまだろう。それでも今度はきっと心が通じると信じて、人は投票所に足を運ぶ。手紙を受け取る側のH氏やA氏には、忘れずにいてほしいものである◆幕末、坂本龍馬が姉にあてた手紙に、有権者の心を代弁したような一節がある。〈日本を今一度せんたく(洗濯)いたし…〉。日本という国の丸洗いを、さあ誰の手にゆだねよう。

2009年8月30日01時19分  読売新聞)
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