少し前になるが、格差社会の現実を示す気になるニュースがあった。親の年収が子どもの学力を左右するという調査結果もその一つだ▼文部科学省によると、小学六年の子どもを持つ親の年収が千二百万円以上の場合、国語、算数とも正答率が平均より8〜10ポイント高く、二百万円未満は逆に10ポイント以上低かった▼東京大学の最近の調査では、親の収入で大学進学率に大きな差があることが確認された。大学生の八割が日本を競争社会と感じながら「努力が報われる社会」と思っているのは半数に満たないとのベネッセコーポレーションの調査結果もあった▼「この国には何でもある。…だが、希望だけがない」と作家の村上龍さんが『希望の国のエクソダス』で書いたのは約十年前だ。学生の多くが努力の意味を疑うような閉塞(へいそく)感はきょう投開票の衆院選にどう反映されるのだろうか▼新聞各社の選挙情勢調査では民主党の圧倒的な優位は動かない。といっても、有権者が民主党の政策を積極的に支持しているのではなさそうだ。世襲政治家たちが首相の座をたらい回しにしたことへの異議申し立てなのか▼「人は政治にかかわりを持たぬようにしても無駄である。政治の方からかかわってくる」(フランスの歴史家モンタランベール)。有権者一人一人が政権選択への意思を示す時だ。日本の将来を左右する長い一日が始まる。