日本再生に向けて政治はどう生まれ変わるべきなのか。今回の衆院選は日本の政治のありようを問う選挙でもあり、「政と官」の関係の在り方が大きな争点となっている。
戦後日本の政治を実質的に支え、動かしてきたのは「官僚主導」の統治システムといえよう。長年の自民党政権下では、政府、与党の「二元体制」の中で、官僚が政策の立案・調整など政策決定に主導的な役割を果たしてきた。
自民党には今なお「官僚依存症」が色濃く残る。しかし、「前例踏襲」「省益優先」の体質から抜け出せず、縦割り行政の弊害も目立つ官僚機構が時代の変化に適応できなくなっているのは誰の目にも明らかだ。
政権交代を目指す民主党がここに思い切ったメスを入れ、マニフェスト(政権公約)の中核に「脱官僚」を据えたのは当然だろう。「官僚丸投げの政治から、政治家主導の政治へ転換」を訴え、政策決定を内閣の下に一元化するとした。
具体的には、各省に閣僚、副大臣、政務官など約100人の国会議員を配置し、政治主導で意思決定を行う。政府内の調整は「閣僚委員会」が担い事務次官会議は廃止。国家ビジョン・予算の骨格を策定する首相直属の「国家戦略局」、国の事業を抜本的に見直す「行政刷新会議」の設置も表明した。
一方、自民党もマニフェストで「政治主導の一層強化」を掲げる。首相を補佐する国家戦略スタッフの配置に加え、国家公務員の幹部職員の一元管理なども打ち出した。縦割り行政の排除などが狙いだろうが、具体的なイメージは描きにくい。「政と官」の関係見直しを総括するという意味でも踏み込み不足の感は否めない。
「消えた年金」問題や税金の無駄遣い、天下り官僚がからむ談合事件などで官僚への風当たりは強い。自民、民主両党とも、公務員の「天下り」根絶では足並みをそろえた。
選挙をきっかけに「政と官」の関係が大きく様変わりする可能性はあろう。ただ、政治家主導を軌道に乗せるのは容易ではあるまい。
官僚機構をどう律し、政治家が官僚をリードする本来の政治の姿を取り戻すにはどうすればいいのか、各党とも見直し議論の中身、道筋をさらに詰める必要があろう。官僚が持つ能力や情報をうまく活用し、実効性ある政策を提案していくべきだろう。問われているのは政治家の資質であり、力量である。