規格外や傷物の野菜など「ワケあり品」が売れていると先日の本紙が伝えている。「わけあって、安い」。29年前、そんなうたい文句とともに登場したのが、セゾングループの無印良品だった。2度の石油危機を経て消費が縮こまる中、40品目でスタートした。
▼40品目の中にシイタケがあった。軸が曲がったり傘が欠けたりで4割を捨てていたシイタケ。しかし用途を調べると7割がだし取りで見た目は関係なし。形が不ぞろいなものも混ぜ、質を落とさず価格を3割下げた。セゾンを率いた堤清二氏が対談集「無印ニッポン」で舞台裏を振り返る。
▼社内では「無印良品は反体制商品」と説明したという。一流デザイナーを起用しても名を出さない。余分な機能や装飾もとことん省く。米国の大量消費とも、流行を追わせる欧州のブランド商法とも一線を画す経営は斬新だった。ユニクロなど手ごわいライバルの追い上げに遭いつつも商品数は7000に増え、海外の店も100を超す。
▼環境、健康、資源の枯渇。日本と世界で生活文化が大きく変わる兆しがある。ワケあり野菜の復権もその一環だろう。1970年代にも似た状況があり、低燃費車など世界商品が育った。簡素を重んじ、自然との共生を目指した日本的生活の中に、成長産業や輸出商品の芽を探してみたい。