原子力施設の地震対策の重要性を関係者は改めてかみしめたのではないか。新潟県中越沖地震に被災した東京電力の柏崎刈羽原子力発電所が復旧し始めたと思ったら、中部電力の浜岡原発が駿河湾を震源とする強い地震に見舞われ、しばらく運転停止せざるを得なくなった。
浜岡原発では3―5号機の3基の原発のうち、5号機だけ揺れが特に強かった。揺れの小さかった2基は9月中に点検が終わり早めに復旧できそうだが、5号機は点検が10月末までかかり大きな揺れの原因究明も必要なので、復旧は遅れそうだ。
原発に関しては3年前に耐震指針が改定され、電力会社は新指針に沿って各原発の耐震性の再点検を進めている。東海地震をもろに受ける恐れのある浜岡原発は新指針に沿う耐震補強もされ、今回の地震でも深刻な被害が出たわけではない。それでも東海地震への備えを考えれば、点検は念入りにせざるを得まい。
特に同じ敷地なのに揺れに大きな差の出た原因は徹底究明が必要だろう。柏崎原発も同様の現象が起き、原因が地下構造にあったことが判明している。新耐震指針では地下構造の影響に言及しておらず、指針にこうした点を盛り込まなくていいのか、見極めが必要だ。
耐震指針は地震時に原発の安全性が損なわれないことだけを念頭に置いている。しかし、地震に見舞われる原発が増えれば、復旧を手際よく進める必要性も高まってくる。地震後の復旧指針も整備し、揺れの大きさに応じた点検項目や復旧の手順などの目安を示すべきではないか。
国内の原発は現在、53基。原発は地球温暖化対策として重要性が高まり、新規原発を増やすほか60%前後の稼働率を80%台に回復させるのが当面の目標になっている。稼働率が向上できれば手っ取り早く温暖化ガスの排出削減につなげられるが、地震対策が甘くては実現できまい。
稼働率の低下は過去には事故・トラブルが主因だったが、ここ数年は耐震問題が絡んでいる。地震大国の日本では、どの原発が大地震に見舞われても不思議はない。大地震で安全性が損なわれないだけでなく、しなやかさを持たせて地震後に早期復旧できる原発を目指す必要がある。