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8月29日付 編集手帳

 11歳という年ごろを知りたくて、書棚を探す。子供の詩集「おひさまのかけら」(川崎洋編、中央公論新社)に、少女の詩を見つけた。〈今日私は十一歳になりました〉◆両親はよく「昔は…」と話す。私はいつになれば「昔」という言葉を使えるのだろう。母に聞くと、「十年ひと昔というから、十一歳になったときね」と答えた。ずっと待っていたという。〈明日からはどうどうと/昔ね 私ねとつかえるんだね〉◆「昔」を語れる人は幸せである。むごい記事を読んだ。米カリフォルニア州で11歳の少女を誘拐し、18年間も自宅に監禁していた男(58)が、手伝った妻(54)とともに逮捕されたという◆いま29歳になっている被害者の女性は、男に2人の子供を産ませられ、裏庭の小屋で「奴隷状態」(地元警察)の生活をさせられていたと報じられている。鬼畜の所業というほかはない◆女性は18年ぶりに母親と再会したというが、「昔」という言葉は彼女にとって生涯、「地獄」と同義だろう。ゲーム機のように人生にも、すべて消去して一からやり直せるボタンがあったなら――むなしい夢想に目をつむる。

2009年8月29日01時07分  読売新聞)
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