「教育は重要課題」のはずだが、衆院選での各党の教育政策は家計負担の軽減案ばかりだ。教育格差の是正や学力向上といった問題は克服できるのか。国家百年の大計としての設計図が見えない。
文部科学省の委託でお茶の水女子大学教授らが昨年度の全国学力テストについて、公立小学校六年生の成績を分析したところ「保護者の年収が高いほど、子供の学力が高い」傾向があったという。
子供を塾や習い事に通わせるにはお金がかかる。日本では子供の学力は親の経済力が大きな支えとなっている。
景気が悪化し、塾どころか、学校でかかる費用に悩んでいる家庭は少なくない。衆院選で各党が打ち出した教育政策は経済支援に重点を置いたものが並ぶ。
自民が給付型奨学金創設や低所得者への授業料無償化、公明が保護者の所得に応じた授業料の段階的減免を主張する。民主や共産は公立高校の授業料無償化と私立高校通学者への支援を唱える。
民主案は授業料相当額を保護者に支給するという。いったん家計に入るため、使途は保護者に委ねられ、実際に高校授業料として使われるかは不透明だ。「ばらまき」にならないか懸念が残る。
格差是正になるかも疑問だ。裕福な家庭は支給されたものを塾費用などにあてることができ、格差拡大のおそれがあるからだ。
経済的理由で進学をためらったり、中退を考えている生徒の支援を実現するのであれば、支給方式を再検討する余地がある。
学費の無償化や支援は就学機会の維持や拡大になるが、学力向上に結び付くとは限らない。
自公政権下の二〇〇七年春に復活した全国学力テストは当初目的に「学力向上」があった。だが、過度な競争を招くとの批判を浴びて「学習指導要領の定着度をみる」という目的にすり替わった。
本年度の全国学力テスト結果が公表された。今年も五十億円以上費やされたが、過去二回のデータと似通った内容だった。
このテストは現場が活用しにくく、学力向上に役立てるのは難しい。民主党は政権を取ったら大幅縮小するという。抽出方式で十分だ。
学力向上にはどんな策を打てばいいのか。少人数教育や習熟度別授業も挙げられよう。それには教師の人員や質、教える内容が関係してくる。次の政権は質を高める処方せんをしっかり書いてから教育政策に取り組むべきだ。
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