横行する中国製模倣品の根絶へ向け、経済産業省は中国商務省に続いて商標権を管轄する国家工商行政管理総局と知的財産権保護の協力に関する覚書を交わした。両国当局間の協力態勢を強化して対策の実効性を高めてもらいたい。
今回の覚書は、6月に東京都内で開いた日中両国の閣僚級による「ハイレベル経済対話」での合意を受けたものである。覚書には実務レベルの作業部会を年1回以上開くことや、模倣品情報の交換、日中が共同で年間作業計画を策定することなどが盛り込まれている。
家電製品やバッグ類、CDなど中国による模倣品や海賊版は実に多彩だ。日中貿易の拡大に伴って日本製品に対する知財権の侵害が深刻化している。特許庁が国内民間企業を対象に昨年実施した調査では、7割近くの企業が中国関係の模倣品で被害を受けたという。あらためて、その多さに驚かされる。
中国政府は取り締まりを強めているが、成果はなかなか上がらない。法整備の不十分さに加えて大きな理由が地方政府の姿勢である。偽物を製造する工場の通報があっても、雇用面など地元の利益になるとして手心を加えているとの指摘もある。
模倣品の横行を許しておけば消費者に対する裏切りはもちろん、違法な製品が安く売られることで日本企業は痛手をこうむる。中国も国際的な信用を失墜させるなど双方にとって大きな不利益といえよう。
中国政府は一段の決意で臨まなければならない。そのためにも日中の当局同士が具体的な案件について情報や知恵を共有し、方策を詰める意義は大きい。連携や信頼を強めて取り締まりに全力を挙げるとともに、知財権の持つ意味を中国内に広く浸透させるよう求めたい。