福岡県で、警官が飲酒運転でひき逃げしたとして、危険運転致傷容疑で送検された。飲酒運転の撲滅に向け、厳罰化も進んだ。なのに、肝心の警官の飲酒運転が後を絶たない。警察は猛省せよ。
逮捕容疑は、四十九歳の巡査部長が夜、国道で乗用車を百メートル逆走させ、女性の運転する乗用車に衝突。頭や胸にけがをした女性の手当てもせず逃げた、とされる。
二百メートル離れた道路脇で地元署員に見つかった。呼気検査を拒み当初は「車は盗まれた」「記憶がない」と否認した。しかし、巡査部長らしき男性が運転していたという目撃証言がある。令状を取った十時間後の血液検査では酒気帯びの基準値の四倍のアルコールが検知された。
検知のアルコール分はビール大瓶三、四本と、泥酔状態だったようだ。車内に缶ビール六本もあり、翌日になって飲酒を認めた。
逮捕日は、福岡市で三年前に幼児三人が飲酒運転の乗用車に追突されて亡くなった命日だった。かつて交通取り締まりを担当していた巡査部長の、頭をよぎらなかったのか。
警察の署員管理にも問題はなかったのか。巡査部長は今年三月、胃潰瘍(かいよう)や肝機能障害で入院し、六月には同居する母親から、勤務署の幹部に飲酒依存で相談があった。幹部は入院を勧め断られたそうだが、部下の飲酒運転は不安ではなかったのか。
残念ながら、警官の飲酒運転は珍しくはない。幹部だけでも昨年十一月、警視庁警視が茨城県のキャンプ場で同僚らと缶ビールを飲んだ後、運転し当て逃げした。五月には、愛知県警守山署の副署長が、飲酒して乗用車で戻ってきたのを署員に見つかった。
三幼児死亡事故の後、酒酔いや酒気帯び運転の罰則強化を盛り込んだ改正道路交通法が施行された。取り締まりを強化しても、こんな警官がいて、国民に飲酒運転撲滅を呼び掛けることができるのか。組織としてなぜ防げなかったのか、徹底した原因究明と再犯防止策を求めたい。
かつて五割を超えていた刑法犯の検挙率が今は三割前後に落ちている。今年の警察白書は「犯罪に強い社会」を目指すとし「国民の一人一人の理解と協力が欠かせない」と強調した。
警官一人一人が、国民の信頼を失わないよう努めること。地道でも今、何より必要だ。
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