日本にとって米国との関係が重要であることは言うまでもない。しかし、急速に台頭する中国と、どう付き合うか、もっと論議していい。日米中関係のバランスは新政権にも大きな課題になる。
日本が頼りにする米国はイラク戦争や金融危機を通じ外交も様変わりした。オバマ大統領は「核兵器のない世界」を提唱し、地球温暖化問題にも取り組み始めた。
経済再建や反テロ、核不拡散など差し迫った課題で従来の同盟国にとどまらず、中国をはじめ新興国との協力を強化している。
中国は著しい経済成長を遂げ年内にも経済規模が日本を追い越しそうだ。日本にとって米国を上回る最大の輸出先に成長した。
しかし、中国が二十一年連続で国防費を二けた成長させているのは気がかりだ。拉致や核、ミサイル問題を抱える北朝鮮をエネルギーや食料支援で支えている。
中国について二大政党はマニフェスト(政権公約)に「関係を増進」(自民党)「信頼構築」(民主党)としか書いていない。
米国は中国との関係強化を求めているが、軍備増強には警戒を隠さない。日米同盟の強化や在日米軍再編も、実は北朝鮮のみならず中国の動向も見据えている。
日米同盟の「信頼性向上」(自民党)や「対等な関係」(民主党)を言うなら、中国への見方を語る必要がある。ましてや「東アジア共同体の構築」(民主党)を目指すには、対中外交の方針がなければ空論にすぎない。
オバマ政権は七月末に中国と閣僚級の「戦略・経済対話」を始めた。経済再建や温暖化対策に中国を取り込もうという戦略だ。
日本にも以前は米国と異なる独自の対中外交があった。改革・開放を支援し、天安門事件(一九八九年)では中国の孤立化を避けるよう西側に働き掛けた。世界貿易機関(WTO)加盟でも対中交渉を米欧に先駆けてまとめた。
しかし、最近では中国をライバル視し、あからさまに対抗する外交も目立つ。
中国に追い越される焦りもあるが、米中の間で日本が輝きを放つ外交の在り方を見いだせないことに原因があるのではないか。
それは国民レベルでも中国に対する、とげとげしい物言いが喝采(かっさい)を浴びる背景にもなっている。
中国の台頭を冷静に受け止め、その活力を経済再生に生かしながらも、中国を脅威とさせない外交の構想力が新政権に問われる。
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